本レースは、阪神芝1800メートルという機動力が求められる舞台で行われます。GIIIということもあり、賞金加算を目指す馬と、実績を積み上げたい若手・中堅騎手が多数参戦しており、各陣営の思惑が複雑に絡み合います。特に1番人気グランヴィノス(川田騎手)、2番人気デビットバローズ(岩田望来騎手)、そして前走GIIIを勝利したオールナット(北村友一騎手)と、人気馬同士の力関係、および彼らをマークする騎手たちの心理が、レースの行方を大きく左右します。
心理: 近走は二桁人気での凡走が続いていますが、前々走の七夕賞で3着に粘るなど、「能力が完全に衰えたわけではない」という自負を武騎手は持っています。今回は6番人気という立ち位置であり、上位人気馬へのマークよりも、馬自身の走る気を引き出すことに集中したいという心理状態です。
戦略: 【内枠を最大限に活かした中団インベタの省エネ騎乗】。スタート直後から内ラチ沿いに進路を取り、馬群の中団で完璧に脚を溜めます。阪神1800mの外回りコースは直線が長いため、最内を通ることで距離ロスを徹底的に排除し、直線での進路確保に全神経を集中します。
根拠: 武騎手は、経験からこの馬の脚質が決め手勝負に向かないことを理解しています。そのため、勝つための最大の近道は「ロスなく運ぶこと」であると判断します。内枠を引いたことで、外を回る有力馬に対して効率で勝る競馬を選択します。
心理: 近走GIIで連敗が続いていますが、AJCCでの2着など「重賞で通用する能力」を再認識しています。4番人気という評価は、彼にとって好走を期待される適度なプレッシャーとなります。この馬の気分を損ねない乗り方を最優先したいという心理です。
戦略: 【前半ゆったり運び、2周目3コーナー手前から徐々に進出するロングスパート】。父ハーツクライ産駒らしい持久力を活かしたい。内枠ですが、あえて馬群にこだわりすぎず、道中は馬のリズムで運び、早めの仕掛けで後続の切れ味を削ぐ持久力勝負に持ち込みます。
根拠: 横山典弘騎手は、馬の気分を尊重し、周囲のペースに惑わされない独自の騎乗スタイルを持っています。この馬は前走2500mを走っており、スタミナは豊富。この中距離戦で他馬が仕掛けるよりワンテンポ早いタイミングでアクションを起こすことが、勝ちにつながると判断します。
心理: 近走は3勝クラスを勝ったばかりで、今回は格上挑戦かつ大穴。国分騎手としては「何も失うものがない」という開き直りの心理状態です。人気馬を意識するより、この馬の得意な競馬に徹したい。
戦略: 【スタート直後からの逃げ、または番手での粘り込み】。この馬は近走で先行して結果を出しているため、ハナを切って自分のペースに持ち込み、後続に脚を使わせる逃げの展開を狙います。
根拠: 国分騎手は勝つためには積極的な策を取るしかなく、この馬の近走の成功体験を再現することが最も合理的です。人気馬は差し・追い込み傾向が強いため、ペースを落として脚を溜めるのではなく、前半から流れを作ってしまうことを選びます。
心理: 3歳馬として56.0kgの斤量は魅力。ラジNIK賞で2着、白百合Sで2着と「重賞初勝利への強い意欲」を持っています。8番人気という評価は、有力馬へのプレッシャーをかけつつ、自分もチャンスを狙える絶好のポジションです。
戦略: 【中団の好位外目を確保し、直線でスムーズに加速】。スタートから積極的に位置を取りに行き、内枠の馬たちをマークしつつ、直線でスペースを確保しやすい外目のポジションを維持します。前を射程圏に入れ、機を待つ差し脚を活かします。
根拠: 坂井騎手は、勝ちに行く競馬を常とします。この馬は安定した先行力を持ちながらも、決め手があるため、馬群に包まれるリスクを避け、3歳馬の勢いと斤量差を最大限に活かすスムーズな進路取りを選択します。
心理: GIIIでは大敗が続き、今回は最下位人気。高杉騎手はまだ経験の浅い若手であり、「まずレースの流れに乗ること」を最優先し、無事に完走させることが最大の目標です。
戦略: 【後方馬群の中で壁を作り、ひたすら折り合いに専念】。人気馬の動きを観察しつつ、馬を人馬ともリラックスさせて運び、直線では可能な限り外に出してのびのび走らせる。積極的な勝負は避けます。
根拠: この馬は近走で先行しても失速しており、若手騎手が無理に位置を取りに行くのは得策ではありません。そのため、馬の力を信じ、脚を溜めて、展開が向いた場合のみ上位に食い込むという現実的な策を取ります。
心理: 前走カシオペアSで3着と好走し、「復調の兆し」を感じています。過去にGIIIで結果が出ていませんが、この馬の先行力と粘り強さを活かせればチャンスがあると信じています。10番人気で気楽に乗れる立場です。
戦略: 【好位の内で虎視眈々と機を窺う】。ブラックシールドや他の先行馬を行かせ、その直後の内側のポジションを確保します。直線で少しでも前のスペースが空けば、内を突いて粘り込みを狙う、ベテランらしいイン突き戦略です。
根拠: 池添騎手は勝負師であり、この馬が力を出すには先行するしかないと判断します。チャレンジCでの大敗は逃げ馬には厳しい展開だったため、今回は逃げずに番手で我慢させることで、この馬の粘り強さを終いまで維持させます。
心理: 近走は二桁着順が続いており、GIIIでの好走経験が遠ざかっているため、自信を失っている状態です。丸田騎手としては「馬の活路を見出す」ことが最重要課題となります。
戦略: 【後方集団の外を回し、馬の個性を尊重した大味な競馬】。内枠での競馬が合わない可能性を考慮し、スタート後は一旦下げて後方へ。外々を回し、馬にストレスを与えず、持っているスタミナを爆発させる。
根拠: この馬は過去に先行して凡走するパターンが多く、前走も先行して失速しています。この馬の特性を考え、一か八かの追い込みにかけることで、馬の気分転換を図り、能力の再発現を促します。
心理: 前走カシオペアSで2着と好走し、「勝利まであと一歩」という強い手応えを感じています。9番人気と人気はありませんが、馬の能力と仕上がりに自信があり、ここで重賞のタイトルを掴みたいという意欲に満ちています。
戦略: 【好位追走から直線で一気に抜け出す正攻法】。スタートから積極的に位置を取りに行き、デビットバローズやグランヴィノスを射程圏内に入れます。内目3~4番手の好位を確保し、馬の瞬発力を最大限に活かせるタイミングで進出します。
根拠: 吉田隼人騎手は新潟記念で好位から差す競馬を試みており、この馬が前につけて力を発揮するタイプであると認識しています。内枠の先行馬を見ながら、外目から被されることなくスムーズに運べる好位を取る戦略が最適です。
心理: 前走アンドロメダSで鮮やかな勝利を収め、「勢いに乗っている」という自信に満ちています。7番人気という評価は実力以上の人気馬を倒せる「挑戦者の立場」であり、プレッシャーは少ない。
戦略: 【中団外目の好位を確保し、長く良い脚を使う】。ブリンカー着用馬。スタートからスピードに乗せて、外目の邪魔が入らないポジションで折り合い、早めにスパートを開始し、粘り込みを狙います。
根拠: 団野騎手は前走で、この馬の末脚の持続力を把握しました。阪神外回りコースで長い直線を利用して加速し続ける競馬が最適であり、馬群で揉まれて力を出し切れないリスクを避けるため、外目をスムーズに回ることを優先します。
心理: 大阪城Sを勝利し、「この距離、このコースでの相性の良さ」に強い確信を持っています。2番人気であり、1番人気グランヴィノスとの力関係も意識せざるを得ず、「負けられない」という重圧を感じています。
戦略: 【好位のインを確保し、グランヴィノスを徹底的にマーク】。スタートから位置を取り、グランヴィノス(川田騎手)の動きを常に監視しながら、内側の経済コースを完璧に回る。直線ではインから抜け出すか、外に持ち出すかの柔軟な対応を狙います。
根拠: 岩田望来騎手は、この馬で勝利を経験しており、この馬の瞬発力を活かすにはインで脚を溜めることが最善だと知っています。また、川田騎手(グランヴィノス)が先に動く可能性が高いため、その動きに合わせた後出しジャンケンの戦略が有効です。
心理: 近走はダートを使われていましたが、今回は芝に戻しての一戦。騎手としては「芝での適性」を再確認したいという心理状態です。3番人気という支持は、実績から来るものであり、芝のGIIIで結果を出したいというプレッシャーは大きいです。
戦略: 【スタートから積極的に先行し、内目好位を確保】。ブリンカー着用馬。前で競馬をして実績を積み上げてきた馬であり、内目の良い位置で折り合わせ、先行集団で粘り込みを狙います。もしペースが速くなれば、内々で我慢し、直線で外に出す選択肢も残します。
根拠: 西村淳也騎手は攻めの騎乗が持ち味。この馬のダートでの先行力を芝でも活かし、GIIIで勝つには積極的に位置を取りに行くしかないと判断します。内目の経済コースを回ることが、久々の芝でもスタミナを温存する最善策です。
心理: マイラーズCで4着、まほろばSで3着と近走の安定感はありますが、重賞での勝利がないため、「なんとか結果を出したい」という若手ならではの意欲があります。11番人気と人気薄であり、思い切った騎乗ができる立場です。
戦略: 【中団後方で脚を溜め、直線で大外一気】。外枠から無理に内へ入ろうとせず、中団より後ろの外目をスムーズに追走し、長い直線で持てるだけの瞬発力を爆発させる。
根拠: 田口騎手は最近、安定感のある競馬を見せていますが、勝利を掴むには大胆さも必要です。この馬の末脚を最大限に活かすには、馬群に揉まれず、直線で進路を確保できる外を回る選択が最もリスクが少なく、リターンが大きいと判断します。
心理: 前走チャレンジCで2着と惜敗しており、「今回は確実に勝ち切る」という強い決意を持った1番人気。所属馬主の期待も大きく、勝利が義務付けられた重圧の中で騎乗します。
戦略: 【好位の外目を確保し、直線で抜け出す盤石な競馬】。デビットバローズ(岩田望来騎手)や先行馬を前に見ながら、中団の外側を追走。スムーズに加速できる位置を取り、他馬が仕掛けるよりわずかに早いタイミングでスパートを開始します。
根拠: 川田騎手は常に最高のポジションを取ることに長けています。この馬が重馬場を除く阪神1800mで連対率100%という実績があり、馬の能力を信頼しているため、リスクを最小限に抑えた正攻法が最適です。内々で揉まれるリスクを避け、外目でいつでも動ける態勢を取ります。
心理: 前走チャレンジCで勝利し、「重賞連勝」という大きな目標を持っています。5番人気という評価は、この馬の能力を考えればやや不当であり、見返したいという意欲に燃えています。
戦略: 【後方待機からの追い込み】。前走の勝利は後方からの差し切りでした。外枠を引いたこともあり、無理に位置を取りに行かず、中団より後ろで脚を溜め、直線で一気に爆発させる。
根拠: 北村騎手は前走の成功パターンを再現することが、この馬の能力を最も引き出せると判断します。外枠でもあり、デビットバローズやグランヴィノスといった有力馬の動向を後方から冷静に観察し、彼らが動いた後に一気に外を回して差し切ることを目指します。