※上位2頭のワンツー決着を完璧に捉えることができた一方で、3着馬の評価と1番人気の凡走要因には深い分析の余地が残る結果となりました。
事前の予想では、16番ルクソールカフェや12番ナルカミがペースを作ると想定していましたが、実際には11番シックスペンス(ルメール騎手)と1番ウィリアムバローズの競り合いにより、前半1000m通過60.3秒という引き締まった流れが形成されました。
特筆すべきは、2ハロン目の10.8秒という極速ラップの後も、中盤が12.2秒前後で緩まなかった点です。これにより、息を入れる隙がない「ごまかしの効かない地力勝負」となりました。さらに驚くべきは、この激流を通過した上で、ラスト1ハロンがレース最速の12.1秒で加速して決着したことです。これは単なる消耗戦ではなく、「道中のタフさに耐え、最後に加速できるスーパーホースのみが生存できたレース」であったと言えます。
■ 坂井瑠星騎手(2. ダブルハートボンド):静の勝利
「1コーナーまでの入り」が勝負の分かれ目でした。激化する先行争いを予測し、無理に付き合わず、しかし位置を下げすぎない「インのポケット(3番手)」を確保した判断が秀逸でした。予想通り、前の馬が苦しくなる展開を味方につけ、最短距離を通ったことが、同タイム・ハナ差の勝利をもたらしました。
■ 川田将雅騎手(8. ウィルソンテソーロ):動の強さ
予想通り「ナルカミを潰す」ような積極的な動きを見せました。3~4コーナーで外からまくり気味に進出したのは、能力への絶対的な自信の表れです。距離ロスを承知で勝ちに行った騎乗は称賛に値しますが、結果としてその「数メートルのロス」が、インを突き抜けた勝ち馬とのハナ差になりました。
■ 戸崎圭太騎手(12. ナルカミ):見えない重圧
1番人気として「包まれたくない」心理が働き、好位外目を確保しましたが、古馬GⅠのタフな流れにおいて、道中息を入れるタイミングを失ったように見受けられます。結果的に、経験値の差がスタミナ切れを招きました。
予想において「リズムが悪く外回しロスが懸念」としてD評価としましたが、結果は3着まで追い込みました。
【反省点】
本馬の「持続力」を過小評価していました。今回のような中間緩まないラップは、一瞬の切れ味よりも、バテずに伸び続ける力が問われます。展開が向いたとはいえ、上位2頭に次ぐ上がり時計で差を詰めた点は、本馬の地力がGⅠ級に達しつつあることを認めるべきでした。「不器用さ」をマイナスしすぎず、「展開不問のエンジン性能」をもっと高く評価すべきでした。
A評価としましたが、初の古馬GⅠの壁は厚いものでした。持ち時計は優秀でも、息の入らないラップ構成への「慣れ」が必要です。これは能力不足というよりは、「経験不足によるガス欠」と捉えるべきでしょう。
【推奨理由:実質的な勝ちに等しい内容】
着順こそ2着ですが、内容としては今回のメンバーで最も強い競馬をしています。
勝ったダブルハートボンドは「内枠・経済コース・斤量56kg」と全ての恩恵を受けましたが、ウィルソンテソーロは「外枠・終始外回し・自ら動く競馬・斤量58kg」という過酷な条件で、同タイムのハナ差です。
物理的な走行距離の差を考慮すれば、エンジン性能は一枚上手と言えます。次走、もし内目の枠に入る、あるいは展開が少しでも緩むようなことがあれば、不動の本命として信頼できます。
【推奨理由:初ダートでのスピード能力】
結果は大敗ですが、初ダートでGⅠのテンの速さ(10.8秒)に戸惑うことなく、むしろ先頭を伺うスピードを見せた点は評価できます。今回は1800mのスタミナ勝負で沈みましたが、このスピードは「マイル(1600m)や1400m」なら脅威となります。次走、距離短縮で出走してきた際は、人気急落が予想されるため、絶好の穴馬として狙えます。
今回のチャンピオンズカップは、予想の根幹であった「ハイペース適性と枠順の利」がそのまま結果に直結しました。S評価の2頭がワンツーを決めたことは、展開読みが正しかった証左です。 しかし、3着以下の序列に関しては、展開の恩恵を受ける「無欲の追い込み馬」への配慮が不足していました。次回は、強い馬が作る激流によって浮上する「漁夫の利タイプ」の選定をより丁寧に行いたいと思います。