真宮寺教授の秘密講義《デブ猫競馬》


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第三章:第二次選定、あるいは「血と格差」の断頭台

研究室のホワイトボードには、生き残った8頭の馬名が誇らしげに並んでいる。しかし、神宮寺教授の瞳は、それらを慈しむどころか、顕微鏡で有害な細菌を観察するかのように冷徹だった。

神宮寺:「さあ、第二次オーディションを始めるわ。ここからは『なんとなくダメ』じゃない。DNAレベルでの適正と、過去の膨大な死屍累々が築き上げた『呪いの法則』に従って、さらに絞り込んでいくわよ」
若葉:「教授、ホワイトボードの横に盛り塩した方がええんとちゃう? 雰囲気が怖すぎるわ!」
神宮寺:「若葉、オカルトに頼るのはデータが尽きた時だけよ。佐倉くん、例の『血統と実績の複合フィルター』を起動して」
佐倉:「了解です、教授。若葉さん、ここからの審査基準はさらに厳しくなりますよ。まずは、このステラスペースから見ていきましょう」
若葉:「ステラスペース! なんかSFアニメの戦艦みたいでかっこええやん! ウチ、この子応援したいわ!」
佐倉:「残念ですが、この馬のお父さんはレイデオロ。つまり、日本競馬界の絶対王者であるサンデーサイレンスの血を継いでいない『非サンデー系』なんです」
若葉:「お父さんがサンデーさんやないとアカンのか? 差別や! 血筋差別や!」
神宮寺:「差別ではなく、統計学的な『不適合』よ。中山2000メートルにおいて、過去10年の三着以内30頭中、実に25頭がサンデーサイレンス系なの。それ以外は、ただの『持続力不足の部外者』に過ぎないわ。さらに前走G3で5着以下に敗れた馬の巻き返し確率は5%未満。ステラスペースはこの二重の呪いに挟まれているの」
血統は物語であり、残酷な設計図。抗えない宿命を数値化するのは心が痛むけれど、勝負の世界に「もしも」は存在しない。ステラスペース。君の血が輝く舞台は、ここではない。ただそれだけのこと。
若葉:「わかった、ステラスペースくん、焼かれる前にお好み焼きの具材になる前に落選や!」
神宮寺:「次は、宝石の名前を持つアメテュストスね」
若葉:「宝石! ウチ、最近『宝石の国』を読み返してボロ泣きしたばっかりやねん。この子は守ってあげたい!」
佐倉:「若葉さん、残念ながらこの馬の実力指数は104で止まっています。今回求められるのは108以上。つまり、現時点での『能力の天井』が完全に見えてしまっているんです」
若葉:「天井……。若手の声優さんが『この役が一生の代表作やな』って悟ってしまうようなもん? もう上にはいかれへんの?」
神宮寺:「ええ。厳しいようですが、一度『頭打ち』になった子が、いきなり覚醒することは稀よ。キラキラしとるだけじゃ、この坂道は登れないわ。落選よ」
神宮寺:「最後は、バステール。新馬戦2着、未勝利戦1着。ピカピカの戦績ね」
若葉:「負けてないやん! この子はエリートコースやろ? さすがにこの子は残るんちゃう?」
佐倉:「逆です。バステールはキャリアわずか2戦。未勝利勝ちから直行して好走したのは過去10年でわずか2頭。この馬は重賞の厳しい流れを一度も経験していない『温室育ち』なんです」
若葉:「ひええ……! まるで『ダンジョン飯』のレッドドラゴンに初心者が挑むようなもん? 丸焼きにされてまう……」
神宮寺:「わかってきたじゃない。ステラスペース、アメテュストス、バステール。この三頭も、私たちの視界からは消えてもらうわ。これで残ったのは、たったの5頭よ」
これで残った5頭。パントルナイーフの指数111、アドマイヤクワッズの112。これらは確かに強力。けれど、理論は完璧なはずなのに、何かが足りない。まるですべてのパズルが揃っているのに、完成図が歪んでいるような……。
若葉:「ひええ、あんなにおったのに、もう5頭だけ? 寂しいなぁ……」
神宮寺:「寂しがっている暇はないわ。ここからは、この5頭の中で誰が最も『王座』に近いか、順位をつける『格付け』の時間よ」