真宮寺教授の秘密講義《デブ猫競馬》


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第六章:不確実性の円舞曲、あるいは「信じない」ための結論

研究室の窓の外では、深夜の静寂が大学のキャンパスを包み込んでいた。モニターに表示された「パントルナイーフ」と「タイダルロック」という二つの名前が、青白く、どこか挑戦的に光っている。

神宮寺:「……というわけで、若葉。これが私たちの旅の終着点よ。理屈が勝つならパントルナイーフ。理屈が壊れるならタイダルロック。これ以上ないほど、美しく、そして危うい二段構えだわ」
若葉:「決まった……! ついに決まったで、教授! 1位の画家くんと、逆転の海の男! これでウチの等身大フィギュアは手に入ったも同然や! 予約ボタン、ポチる準備は万端やで!」
佐倉:「若葉さん、まだ早いですよ。競馬に『絶対』はありませんから。教授、最後にあの『疑念』について話しておかなくていいんですか?」
若葉:「え、またそれ? なんでやの、教授! 講義は完璧やったやんか!」
神宮寺:「弥生賞というのは、あくまで『予選』なの。多くの馬にとっての目標は、その先にある皐月賞や日本ダービー……つまり『本番』よ。トップクラスの馬ほど、ここでは8割の力しか出さない『叩き台』として使うことがある。逆に権利が欲しい馬は120パーセントで来る。この『熱量』の差は、指数には現れないわ」
若葉:「ひええ……! それじゃあ、データの上の実力差なんて、一瞬でひっくり返るやんか!」
データは嘘をつかない。けれど、馬も人間も、データ通りに動くほど素直ではない。この結論も、私が自分自身の論理を肯定したいがための心地よい幻覚ではないかしら。昨日のアニメの作画崩壊のように、現実もまた、予期せぬ場所から崩れていくものなのよ。
―― 最終考察の結論 ――

本命候補:パントルナイーフ
(論理的必然。能力と適性の黄金比)

逆転穴馬:タイダルロック
(消耗戦の覇者。スタミナの生存証明)

若葉:「教授……。それ言ったらおしまいよ! ウチ、何を信じたらええのん!」
神宮寺:「何も信じなくていいのよ、若葉。競馬も、科学も、そしてアニメの展開も、不確実だからこそ面白いの。私たちは、ただその不確実性を、少しだけ数字で照らしてみたに過ぎない。……さあ、帰りましょう。脳がオーバーヒートして、もっともらしい嘘(ハルティネーション)を吐き出す前にね」
佐倉:「若葉さん、フィギュアの予約はレースの結果を見てからでもいいんじゃないですか?」
若葉:「……せやな。ウチ、ちょっと冷静になるわ。帰りにコンビニでイチゴ大福買って帰るわ。……あ、でも大福も中身のイチゴが酸っぱいかもしれんっていう『不確実性』があるんやね……」
神宮寺:「それは単なるハズレよ、若葉。……おやすみなさい。週末の中山に、真実は落ちているのかしらね」

神宮寺教授が研究室の照明を消すと、暗闇の中に最後まで残ったのは、モニターの隅で点滅する「的中」という文字の空虚な輝きだけだった。

結局、私たちは何も分かっていないのかもしれない。でも、それでもいい。解けない謎があるからこそ、解析はやめられないのだから。……ふふ、もしタイダルロックが勝ったら、私もあの等身大フィギュア、買ってみようかしら。研究資料としてね。