小説『真宮寺教授の秘密講義』
第3章:ステージの相性と、消えゆく残像《デブ猫競馬》
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「……教授。それ、節分の時期はもう過ぎてますよ。しかも、さっきから壁に当たった豆が跳ね返って僕のコーヒーに入りそうなんですけど」
佐倉が呆れて指差した先には、机の上に置かれた「全自動・全方位・超高速で豆を投げるマシン」を熱心に調整する真宮寺教授の姿があった。
真宮寺:「これはね、佐倉くん。豆の軌道を予測することで、カオス理論における初期条件の鋭敏性を証明しているのよ。……というのは嘘で、昨日見たアニメ『魔法少女まじかる☆納豆』の必殺技を再現しようとしただけ」
佐倉:「教授、時々本気で心配になります。そんなことより東京新聞杯の第2段階、進めてもいいですか? まだ12頭も残ってるんですよ」
(ああ、佐倉くん。君はきっと『連勝中の馬』とか『昔強かった馬』に、まるで初恋のような淡い期待を抱いているんでしょうね。でも残念。データの世界に『初恋の思い出』は通用しないの。高嶺の花だと思っていた彼女が、同窓会で久しぶりに会ったら全然話が合わなかった……なんてこと、よくあるじゃない? それを今から証明してあげるわ)
真宮寺:「そうね。豆の軌道よりは、馬の走るコースの方がまだ予測しやすいわ。第1段階は『物理的なガタ』。今回はより実戦的な『適性のミスマッチ』と『格の違い』……いわば、ステージの相性でふるいにかけるわよ」
佐倉:「ステージの相性、ですか。実績のある馬ばかりですけど、削れますか?」
真宮寺:「まずはヤマニンサルバム。彼は2000m前後の持久力ランナーよ。今回走るのは1600m。彼が最後にマイルを走ったのは3年以上前。スタミナがあっても、この『全力疾走の延長』である東京マイルの高速ラップでは、追走だけで脚を使って自慢の粘りが死ぬわ。距離短縮の壁はデータ上、非常に高いのよ」
佐倉:「スタミナ自慢がスピード勝負に持ち込まれると厳しい、と。じゃあ、3連勝中のエンペラーズソードは? 勢いありますよ!」
真宮寺:「甘いわ、佐倉くん。彼の3連勝はすべて『条件戦』。地方の草野球で無双していた少年が、いきなり大谷翔平のいるメジャーリーグに放り込まれるようなものよ。別定戦で実績馬と同じ57kgを背負って戦うのは、この馬にとって最大のハンデ。勢いという不確定要素(イレギュラー)に賭けるのは非効率的ね」
佐倉:「実績馬と対等な条件で戦うには、まだ早いってことですね。じゃあ、3頭目は?」
真宮寺:「最後はウンブライル。6歳の牝馬よ。かつてのGⅠ 2着の実績はあるけれど、直近のレースで1番人気を裏切って大敗している。牝馬は一度バイオリズムを崩すと立て直しが難しい生き物なのよ。かつての栄光を信じて買い続けるのは、サービスが終了したソーシャルゲームに課金し続けるようなもの。冷静になりなさい、佐倉くん」
佐倉:「……ソシャゲのサ終。それは痛い。わかりました、納得です」
【第2次消去馬:3頭】
5. ヤマニンサルバム(距離短縮への不安・適性不一致)
6. エンペラーズソード(格下・定量的な力不足)
7. ウンブライル(近走の大敗・ピークアウトの懸念)
真宮寺:「これでさらに3頭が脱落。残るは9頭。ここからは、より『数字の深淵』に踏み込むわよ。覚悟はいい?」
16頭いた登録馬は、ついに一桁の「9頭」へ。
次なるフィルターは、残酷なまでの「スピード指数の天井」。