「VOICEVOX: 四国めたん」「VOICEVOX: 春日部つむぎ」「VOICEVOX: 雨晴はう」「VOICEVOX: 波音リツ」「VOICEVOX: 冥鳴ひまり」「VOICEVOX: もち子さん」「VOICEVOX: WhiteCUL」
「今日は私が、このレースの主役になるのよ!」
ゲートが開くやいなや、6番のエリカエクスプレス(牝3)が最内枠から弾丸のように飛び出した。 彼女は昨年の牝馬クラシックでも、常に先頭を主張してきた快速馬だ。 (私のスピードは誰にも負けない。この京都の芝、2200メートルという長い距離で、皆が私を警戒しているのは知っている。 だからこそ、私は逃げる。私だけのリズムで、皆のスタミナを削り取りながら、このまま直線へ。)
外目からは、10番のセキトバイースト(牝4)が淡々とした表情で追走する。 彼女は決して目立つ存在ではないが、前々でしぶとく粘り込む勝負根性が武器だ。 (エリカエクスプレスが行くなら、行かせてしまおう。彼女は速すぎる。私は3番手、外を回さず、 自分のペースを保つことに徹する。長いレースだもの、最後に残るのは、最も冷静に走った馬。)
セキトバイーストのすぐ外、4番手にリンクスティップ(16番・牝3)がつく。 (この位置取り、完璧よ。3歳馬として54キロの斤量は大きな武器。前に壁を作りつつ、内から2頭分の間隔を空けている。 この外回りのコースで、最短距離を進みすぎても危険。長くいい脚を使うためには、体力を温存しつつ、 常に先頭集団を視野に入れる。)
そして、馬群の中団、少し後ろには1番のパラディレーヌ(牝3)が息を潜めていた。 (私は3歳の新星。この密集した馬群の中で、じっと我慢する。内ラチ沿いの経済コース。 ここを回れば、最後は必ず脚が残る。勝負は4コーナーを回ってから。それまでは、静かに、影のように。)
その後方、女王の風格を漂わせながら7番のレガレイラ(牝4)は走っていた。 (前は速い。エリカエクスプレス、あなたはいつも派手ね。でも、そのスピードが2200メートルでどこまで持つかしら。 私は9番手。少し外目を回るけれど、馬群の外でスムーズに走れる方がいい。私の武器は爆発的な「一瞬の加速」ではない。 400メートルに及ぶ「持続的な破壊力」よ。直線までの800メートル、私はただ呼吸を整え、力を溜め続ける。)
レガレイラのすぐ内、2番のステレンボッシュ(牝4)はレガレイラの動きに全神経を集中させていた。 (レガレイラ。あなたは昨年の有馬記念馬。今年の春、私は桜花賞を勝ったけれど、あなたは本当に別格だわ。 私の理想のポジションはレガレイラの直後。彼女を目標にして、その瞬発力に食らいつく。もし、彼女が動けない展開になれば、 私が牝馬の頂点に立つ。絶対に、負けたくない。)
一方、ライラック(12番・牝6)は、馬群の遥か最後方、15番手で走っていた。 (ああ、この孤独な道が私の勝負所。皆、私の末脚を知っているから、早めに仕掛けて潰しに来るはず。 だから私は、誰にも邪魔されない空気の中で、自分の力を解放する。直線で全てを抜き去る。それが、6歳の私に課せられた使命。)
レースは淡々と1000メートルを通過した。 エリカエクスプレスはまだ先頭。しかし、彼女の息遣いは既に荒くなり始めている。 (苦しい。でも、ここで譲ったら全てが終わる。後ろは来ているかしら。まだ影も踏ませない!)
3コーナー。 セキトバイースト、リンクスティップは、 エリカエクスプレスとの差をじわりと詰める。
「勝負はここから!」
レガレイラとステレンボッシュが同時に動き出す。 レガレイラは4コーナー手前で外に持ち出し、 既に加速を始めている。 (3ハロン34秒台の末脚を、誰が使える?私だけよ。この長い直線、全てを薙ぎ倒す!)
ステレンボッシュは彼女に必死で食らいつくが、レガレイラは一瞬にして彼女を引き離した。 (差がつく! 私の脚ではレガレイラに勝てないのか! それでも、諦めない! 2着、3着でも、最後までゴールを目指す!)
4コーナー、先頭のエリカエクスプレスが失速する。 シンリョクカは力尽き、後退。 先行勢が一斉に崩れ始めたその瞬間、リンクスティップが鋭く中央から先頭を狙える位置を取る。 (今だ! 私の計算通り。前にスペースができた!ここが勝負所。射程圏にいる戦闘集団を狙い撃つ!)
しかし、その外から、レガレイラが猛烈な勢いで迫ってくる。
さらにその後ろ、遥か後方からは、ライラックの豪脚が炸裂していた。 (届く! 届かなければ意味がない!前を走る全馬を飲み込む。私は孤高の追い込み馬!)
直線。
そして、中央真ん中を突き抜けて、パラディレーヌが急浮上した。 (私はこのタイミングを待っていた。この先頭は譲らない。ここからは私の独壇場だ。絶対に勝つ。 3歳牝馬の意地を見せてやる!)
リンクスティップが激しい気合と精神力で先頭に迫る。 しかし、次元の違う速度でレガレイラが集団を飲み込んでいく。
最後はレガレイラが2着のパラディレーヌに 1馬身3/4差をつけてゴール板を駆け抜けた。 (私は女王。私の時代は終わらない。)
パラディレーヌは全力を出し切り、3歳馬として2着に粘り込む。 そして、大外から奇跡の末脚でライラックがリンクスティップをアタマ差交わし3着を確保。 (これで十分だわ。私の走りは、私の誇り。)
牝馬たちの熱い決意が、2200メートルのターフに焼き付いていた。
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