「VOICEVOX: 雀松朱司」「VOICEVOX: 玄野武宏」「VOICEVOX: 白上虎太郎」「VOICEVOX: 青山龍星」「VOICEVOX: 剣崎雌雄」「VOICEVOX: 麒ヶ島宗麟」「VOICEVOX: †聖騎士 紅桜†」
東京競馬場、芝千八百メートル。
乾いた高速馬場は、２歳馬たちの未知なる力を
試すために整えられていた。
一瞬のスピードと持続力が、
勝利と敗北の境界線を定める。
若さの衝動が、ゲートの中で爆発を待っていた。
「俺は、俺のペースでこのレースを作る」
テルヒコウ（２番・牡２）は、
荒ぶる気持ちを抑え込み、スタートを意識した。
（強敵は多い。だが、誰かがこのレースを動かさなければ、
俺の勝利はない。前半の速い流れを受け入れ、
２ハロン目の１１秒１というラップで、
後続に牽制を仕掛ける。
このままハナを譲らず、
最後まで粘り込みを図るのが俺の戦法だ。）
ゲートが開くと、テルヒコウは迷わず先頭を奪った。
すぐ内側で並びかけたラストスマイルを牽制しつつ、
１コーナーを駆け抜けていく。
その少し後ろ、先行集団の３番手につけたのは、
冷静に流れを読む一頭だった。
「前半の速いラップは歓迎。無理せず脚を溜める」
ライヒスアドラー（４番・牡２）は、
テルヒコウとラストスマイルの２馬身以上後方、
理想的なポジションを確保した。
（ここで無理に競り合う必要はない。
直線でのトップスピード勝負になることは、
この馬場とメンバーを見れば明らかだ。
先行勢として、脚を溜めつつ、
いつでも動ける位置をキープする。
３着以内は絶対に確保する。）
中団、馬群の真ん中、７番手の位置で
パントルナイーフ（１０番・牡２）は、
一切の力を使わずにリズムに乗っていた。
「前半の流れは速い。このまま内側をロスなく進む」
（焦るな。このレースの鍵は４コーナーの立ち上がりだ。
中盤でペースが緩んだとしても、
ラスト３ハロンは必ず強烈な加速が求められる。
私は内側で最短距離を通り、
貯めた脚を一気に解き放つ。
イン突きが、私に残された最高の戦略だ。）
後方、１０番手の外目にいたダノンヒストリー（９番・牡２）は、
静かに戦況を見つめていた。
「多少の出遅れはいい！この展開は望むところ。大外一気で全てを飲み込む」
（超高速上がりの持続力勝負。
先行勢が３ハロン目から失速するのを待つ。
私は自分の末脚の質を信じる。
直線で馬群から離れた大外に出し、
一気に最高速に達する。
そのためには、まだ我慢が必要だ。）
向こう正面から３コーナーにかけて、
ラップは１２秒台へとわずかに緩む。
この瞬間、中団にいた一頭が、
一気にレースを動かす決断を下した。
「ここで一気に前へ！ ペースを支配する」
チュウワカーネギー（７番・牡２）は、
５番手から外を回り、瞬く間に先頭のテルヒコウに並びかけた。
（ペースが緩んだのは一瞬。このままでは差し馬に有利すぎる。
私がレースを動かし、先行勢にプレッシャーをかける。
ここで先頭に並びかけ、テルヒコウのスタミナを削る。）
チュウワカーネギーの強引な進出に、
中団の馬たちが一斉に反応する。
サレジオ（６番・牡２）は、
（動くべきだ。ここで動かなければ、
このまま団子状態の馬群に飲み込まれる。
前との差を詰める。チュウワカーネギーの動きに乗って、
私も先行集団の一角へ押し上げる。）
サレジオは馬群の隙間を縫って、
３コーナーで先行団子の集団に加わった。
一方、中団後方のポケットにいたゾロアストロ（８番・牡２）は、
身動きが取れずに我慢を強いられていた。
「最速の上がりを出すために、ここは我慢！」
（動きたい。動いて、外のスペースに出たい。
だが、馬群が壁となって進路がない。
このままインのポケットで耐え忍び、
４コーナーを回る瞬間まで脚を溜め続ける。
最後の直線で進路さえ開けば、
私の末脚は誰よりも速いと確信している。）
パントルナイーフは、内側でロスなく進路を確保し、
ラストスマイルと併走しながら４番手集団へ。
（最高の場所だ。４コーナーでインを突けば、
最短距離で直線へ入れる。
私には、このハイレベルな加速に対応できるトップスピードがある。）
４コーナー。ラップは１１秒台前半へと急加速し、
レースは最高潮の勝負所を迎えた。
先頭で粘るテルヒコウは、激しい疲労を感じていた。
（脚が、もう、言うことをきかない。
しかし、ここで止まるわけにはいかない。
粘れ、粘りきれ！
俺の誇りにかけて、最後まで先頭を譲るな。）
チュウワカーネギーは、早めの仕掛けが響き、
テルヒコウを捉えきれないまま脚色が鈍り始める。
インを回るパントルナイーフの思考は明快だった。
（最短距離！ 外を回る馬たちよりも、
このインコースを選んだ私が有利だ。
内ラチ沿いを離さず、
直線の先頭へ！）
そして、大集団のポケットから、
ついにゾロアストロが抜け出すための進路を確保した。
「今だ！ 外へ出ろ！
溜めた全ての力を、この直線で解放する！」
ゾロアストロは大外へ持ち出し、
弾丸のような末脚で猛然と追い込みを開始する。
最終直線。ラスト２ハロンも１１秒台前半の猛烈な持続力勝負。
逃げ粘るテルヒコウを、インから抜け出したパントルナイーフが捉えた。
「私の戦略が勝った！ このままゴールまで突き放す！」
パントルナイーフのトップスピードは強烈だ。
しかし、大外からは、もはや別の次元の末脚。
ゾロアストロが猛然と迫り、その差はアタマ差まで詰まる。
先行集団で粘り続けたライヒスアドラーも、
（粘れ！ ３着は譲らない！
前半で溜めた脚は、まだ残っているはずだ！）
と、必死に食い下がり、掲示板を確保する。
後方から大外を回したダノンヒストリーは、
（届かない！ このラップに、この差は大きすぎる！
もう少し、３コーナーで動くべきだったか…！）
溜めすぎた故の、トップスピード勝負での敗北。
脚は速い（上がり３３秒５）が、
前を行く馬たち（３２秒台）の速さには対応できなかった。
パントルナイーフは、ゾロアストロの猛追をアタマ差で凌ぎ切り、
内ラチ沿いの最短距離で勝利を掴んだ。
勝敗の明暗を分けたのは、
若き２歳馬たちの、一瞬の立ち回りと、
トップスピードの境界線だった。
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