中山の芝は今日も静かだ。 静かだが、信用はできない。 (ここは正直) (正直すぎて胃が痛くなる場所)
スタート前。 全員が同じことを考えている。 (やり直しはない)
「行くよ、オレは」 【5番 牡5】ピースワンデュックが言った。
(行くって決めてるから行く) (行かない理由を考える方が面倒) (逃げた時点で仕事は終わり) (あとは世界が勝手に評価すればいい)
ゲートが開く。 一歩目。 ピースワンデュックは即決。
(はい先頭) (異論は認めない)
後ろが騒がしい。 だが気にしない。
(後ろって) (前がいない人たちでしょ)
序盤。 ちょっと速い。 だが本人は気にしていない。
(速く見えるだけ) (速いように見せてるだけ) (演出ってやつ)
中山の最初の坂。 脚に来る。
(来るけど) (知ってた) (知ってたから前)
後ろ。 視線が刺さる。
(視線はカロリーゼロ)
ピースワンデュックは進む。
【11番 牡4】カラマティアノスは、 三番手あたりで冷静だった。
(はい、想定どおり) (前が主張する) (外も主張する) (結果、ここが空く)
冷静沈着。 というより計算機。
(今動く理由) (特にない) (動かない理由は山ほどある)
中山。 小回り。 開幕週。
(ここは庭) (芝生の生え方まで知ってる気がする) (気がするだけだけど)
周囲を見る。
(みんな必死) (資料になる)
【2番 牝5】アンゴラブラックは内側。 壁。 壁。 また壁。
(落ち着いて) (予定通り) (全部予定通り)
と言い聞かせる。
(1番人気って) (なんでこんなに視線が重いの) (脚より先に心が疲れる)
前を見据える。
(内は最短) (外は遠足) (今日は遠足じゃない)
我慢。 とにかく我慢。
(正しい競馬をしてる) (正しいはず) (正しいって言って)
【8番 せん7】グランディアは後方寄り。
(うん) (まあ) (そうなるよね)
全体が見える。 見えすぎる。
(前は止まらない) (でも止まらせるのが仕事)
年齢? 知らない。
(まだ走れる) (走れるうちは若手)
外を確認。
(回るなあ) (でも回る) (回るしかない)
【3番 牝4】カネラフィーナ。 思考が多い。
(近い?) (遠い?) (今?) (今じゃない?)
脳内会議が終わらない。
(落ち着け) (深呼吸) (深呼吸してる場合じゃない)
位置が気になる。 とにかく気になる。
(脚はある) (あるって信じてる)
3コーナー。 空気が変わる。
ピースワンデュックの背中に圧。
(来た来た) (いいね) (これでレースっぽい)
外からリカンカブール。 さらにそれを見て、 カラマティアノスが動く。
(資料更新) (想定内)
アンゴラブラックは内で我慢。
(出ない) (出ないって決めた) (出たら負け)
グランディアは外を選ぶ。
(距離ロス?) (知ってる) (それでも行く)
カネラフィーナ。
(今じゃない) (あ、今かも)
4コーナー。 全員集合。
(混む) (非常に混む)
ピースワンデュック。 リカンカブール。 カラマティアノス。
三頭並ぶ。
(作ったな) (これは作った)
直線。 坂。
(ここ) (中山名物) (毎回文句言われる坂)
カラマティアノスが出る。
(はい) (勝ち筋)
アンゴラブラックが内を突く。
(そこ!?) (そこ空くの!?) (聞いてない)
グランディアが外から来る。
(届くか) (届かせたい)
カネラフィーナ。
(遅れた) (ほんの一瞬) (その一瞬が命取り)
残り200。 速い。 速すぎる。
(坂で加速って) (意味わからん)
思考が削れる。
(正解は) (今)
ゴール。
ハナ。 クビ。
(心臓に悪い)
カラマティアノス。
(完璧) (なのにギリ) (なんで地味扱い)
アンゴラブラック。
(内容は一番) (絶対) (異論は論文で受け付ける)
グランディア。
(惜しいな) (でも) (まだいける)
ピースワンデュック。
(5着) (悪くない) (作ったし)
芝は何も言わない。 ただ事実だけが残る。
走る思想は、 今日も正直すぎる結果を叩きつけた。
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