東京競馬場、芝二千四百メートル。 そこは、若き駿馬たちが『ダービー』という名の全宇宙を統べる皇帝の座を賭け、己の全存在を燃焼させる緑の星系であった。 四月二十五日。 陽光は峻烈にターフを焼き、空気には跳ね上げられた芝の香りと、数万の観衆が吐き出す「期待」という名の熱波が、光子魚雷の余波のごとく渦巻いている。 ゲートの中に、その男――いや、その覇者(おうじゃ)はいた。
ゴーイントゥスカイ(16番・ラインハルト):ゴーイントゥスカイ(16番・ラインハルト)は、黄金のたてがみを傲岸不遜に揺らし、隣接するゲートの有象無象を氷の双眸で一瞥した。 ゴーイントゥスカイ(16番・ラインハルト):「フン、不敬な……。私の視界に、これほど多くの雑多な艦列が入り込むとは。キルヒアイス、そこにいるか?」
タイダルロック(7番・キルヒアイス):「はい、ラインハルト様。あなたの斜め後方、十五番手より戦域の全方位を監視しております。どうか心おきなく、その覇道を駆け抜けてください」
ゴーイントゥスカイ(16番・ラインハルト):「十五番手だと? それでは私の影を追うことすら叶わぬぞ。もっと私に近い座標へ来い。この宇宙の覇権を握るのは私なのだからな」
タイダルロック(7番・キルヒアイス):「滅相もございません。私の脚質という名の戦略上、今はここが『最適解』なのです。後に必ず、あなたの隣へ……主君の風除けとなる位置へ、全速で転進いたします」
ゴーイントゥスカイ(16番・ラインハルト):「……よかろう。貴様の忠誠、先頭という名の最高議場にて受け取ってやる。だが遅れるなよ、赤毛の馬!」
タイダルロック(7番・キルヒアイス):「ええ、ラインハルト様。あなたの覇道に、土など一粒も――後続の誰一人として触れさせはしません」
運命のハッチが解印される直前、二頭の間に流れたのは、言葉を超えた「常勝」の誓いであった。
ノチェセラーダ(11番・ロイエンタール):(この距離なら私の野心の方が勝る。まずは奴らに道を譲らせるとしよう)
一方、内枠の好位では、冷徹なる演算機が静かに作動を開始していた。 ブラックオリンピア(4番・オーベルシュタイン)は、感情の欠片も宿さぬ義眼のごとき瞳で、前方の艦列――否、隊列をスキャンしていた。
ブラックオリンピア(4番・オーベルシュタイン):「……無意味な精神論だな。勝利とは、最も効率的な進路の選択と、心肺機能の最適配分によって導き出される数学的回答に過ぎん」
その直近、鋭い殺気を放つ一頭が、不敵に鼻を鳴らす。
ノチェセラーダ(11番・ロイエンタール):「相変わらずだな、ブラックオリンピア。貴様の走りはまるで乾いた砂を噛むようだ。もっと情熱的に、あるいは美学を持って土を蹴ったらどうだ?」
ブラックオリンピア(4番・オーベルシュタイン):「ノチェセラーダか。美学で賞金という名の軍資金が稼げるなら、私は喜んで詩人にでもなろう。だが、現実は三ハロンの加速ラップという数値が全てだ。貴様の金銀妖瞳(ヘテロクロミア)には、敗北の兆しは投影されていないのか?」
ノチェセラーダ(11番・ロイエンタール):「抜かせ。この泥にまみれたターフで、誰が最も美しく、誰が最も残酷に勝利をもぎ取るか……今ここで証明してやる。貴様の喉笛を、私の前脚で叩き切ってな」
ブラックオリンピア(4番・オーベルシュタイン):「……物騒な比喩だな。だが、確率論から言えば、貴様が私を上回る可能性は十二・五パーセントに過ぎん。精々、泥を被らぬよう祈ることだ」
ブラックオリンピア(4番・オーベルシュタイン):(一番人気の重圧? 下らない。それは無知な大衆が投じた紙屑の、物理的な重みでしかない)
テルヒコウ(6番・アッテンボロー):「ゲートが開くぞ! 野郎ども、全艦一斉に抜錨(スタート)だ!」
先頭の檻の中で吼えるのは、規律に縛られぬ自由奔放な気風を纏った一頭であった。
テルヒコウ(6番・アッテンボロー):「いいか、俺のケツを拝めるのは今のうちだけだぜ! 二千四百メートル? そんな長丁場、伊達や酔狂で駆け抜けてやるよ!」
ファンファーレという名の開戦信号が鼓膜を突き刺し、鉄の檻が解印された。 「ガシャン!」という硬質な衝撃音が、宇宙の静寂を破る砲声のごとく鳴り響く。
スタートの瞬間、テルヒコウが重力から解き放たれたように猛然と飛び出した。 一ハロン目は十二秒五。 しかし、二ハロン目に入るや否や、彼はまるで緊急ワープ航法でも使用したかのように異常な加速を開始した。
電光掲示板に刻まれたラップタイムは、十一秒二。 テルヒコウ(6番・アッテンボロー):(……ちょっと速すぎないか? まぁ、負け戦を面白くするのが俺の主義だ。今は俺様が主役でね!)
テルヒコウ(6番・アッテンボロー):「ハハハ! 見ろよ、後続の艦列(馬群)がゴミのようだ! このまま独走して、ゴールという名の不落の要塞で紅茶でも飲んでやるぜ!」 遥か後方、静まり返った馬群の中から、凍りつくような呆れ声が通信のように飛ぶ。
ブラックオリンピア(4番・オーベルシュタイン):「……狂気の沙汰だな。二ハロン目に十一秒二という無謀な出力を刻んで、帰還できるとでも思っているのか? エネルギーの浪費であり、職務怠慢にも等しい」
ノチェセラーダ(11番・ロイエンタール):「だが、あの逃げは悪くない。現時点でレースという名の戦場を支配しているのは、貴様の計算機ではなくあの道化だということだ」
ブラックオリンピア(4番・オーベルシュタイン):「支配ではなく、低俗な攪乱だ。私は四番手の座標を維持し、風の抵抗を排除する。物理的な最小公倍数を選択するのみだ」
艦列は一気に縦長へと引き伸ばされた。 第一コーナーから第二コーナー。 テルヒコウ(6番・アッテンボロー)が軽快に――あるいは投げやりに戦域を独走し、それをシャドウマスターとヨカオウの二艦が追尾する。 ブラックオリンピア(4番・オーベルシュタイン)は最短航路であるインコースの座標に潜り込み、音もなく牙を研ぎ澄ませていた。 一方、真の王者はまだ動かない。
ゴーイントゥスカイ(16番・ラインハルト)は十番手付近を維持。 蹄が重厚に芝を叩く低周波が、艦橋(ブリッジ)の床を揺らす振動のように腹の底まで響いてくる。 ゴーイントゥスカイ(16番・ラインハルト):(……前方の有象無象どもが必死に呼吸を乱しているな。滑稽なことだ。無自覚のうちに、私のための凱旋路を整えているとは)
ゴーイントゥスカイ(16番・ラインハルト):「キルヒアイス、聞こえるか。この退屈なパレードはいつまで続く? 私は今すぐにでも、あの逃げ馬の首を獲り、戦局を終わらせたいのだが」
タイダルロック(7番・キルヒアイス):「ラインハルト様、どうかご辛抱を。今は重力波に逆らう時ではありません。東京の長い直線こそが、あなたの帝国となるのです。今は私の背中で、風を避けてください」
ゴーイントゥスカイ(16番・ラインハルト):「貴様の背中で、だと? 私に後塵を拝せと言うのか!」
タイダルロック(7番・キルヒアイス):「いいえ。私があなたの不滅の盾となり、勝利という名の果実をより確実なものにするためです。どうか、私の誠意を疑わないでください」
ゴーイントゥスカイ(16番・ラインハルト):「……フン、相変わらずお節介な男だ。だが、その進言、信じよう。お前の赤い毛並みが、私の視界を遮らぬ程度にな」
その遥か最後方では、一頭の若き駿馬が必死に艦列に食らいついていた。 ミッキーファルコン(5番・ユリアン):「わわっ、先輩たち、速すぎます! 待ってください、僕を置いていかないで!」
彼は「若き後継者」と呼ばれ、陣営の期待をその細い双肩に一身に背負っていた。 ミッキーファルコン(5番・ユリアン):「ヤン提督……じゃなかった、みんなが僕を見てるんだ。最後方からでも、きっと、きっと逆転の航路はあるはず……! あ、でも、跳ね上げられた砂が口に入って苦い……」
ミッキーファルコン(5番・ユリアン):(今は我慢の時だ。エネルギーを充填し、最後の一瞬に全出力を賭けるんだ……!)
第三コーナーに差し掛かる。 ハロンタイムは十二秒六、そして十一秒九。 わずかに緩んだ空域が、再び高密度の緊張で張り詰める。 テルヒコウ(6番・アッテンボロー)の逃げ脚に陰りが見え始めたが、後続の艦列もまた、決定的な仕掛けのタイミングを測りかねていた。
ブラックオリンピア(4番・オーベルシュタイン):「演算終了。これより、先行集団のエネルギー枯渇と脱落が始まる。私は内ラチから三・五メートルのラインを維持し、直線での最大出力加速に備える」
ノチェセラーダ(11番・ロイエンタール):「おい、ブラックオリンピア。貴様の計算式に、私の『反逆』という変数は含まれているか?」
ブラックオリンピア(4番・オーベルシュタイン):「反逆? ただの蛇行だろう。進路妨害という名の軍法会議(審議)にならないよう気をつけることだな」
ノチェセラーダ(11番・ロイエンタール):「ふん、相変わらず冷淡な奴だ。だが、その冷徹さが崩れる瞬間を見るのが、今の私の唯一の愉しみだよ」
ブラックオリンピア(4番・オーベルシュタイン):(心拍数上昇。酸素摂取量、臨界値の百分之八十。作戦は予定通りに推移している)
第四コーナー。 戦域に、絶望的なアクシデントが突発した。 中団を航行していたノーブルサヴェージが、突然バランスを崩し、戦線から離脱していく。 悲鳴のような嘶きが、静寂の宇宙(ターフ)に消える。
タイダルロック(7番・キルヒアイス):「ラインハルト様、左前方! 故障艦です。即座に外へ回避を!」
ゴーイントゥスカイ(16番・ラインハルト):「ぬかせ、これしきの混乱! 私の覇道に障害物など存在せぬわ!」
ゴーイントゥスカイ(16番・ラインハルト)は黄金のたてがみを翻し、大外へと一気に舵を切った。 その瞳には、もはや前方の矮小な馬群ではなく、その先に広がるダービーという名の銀河の玉座が映っていた。
ゴーイントゥスカイ(16番・ラインハルト):「さあ、見せてやろう。真の王者が誰であるかを!」
ゴーイントゥスカイ(16番・ラインハルト):(前方の艦列が割れる。私のための、私だけの栄光へと続く凱旋路(レッドカーペット)だ!)
府中の長い直線。 西日が芝を黄金色に染め上げ、駿馬たちの熱い呼気が、大気圏突入時の摩擦熱のように霧となって立ち込める。
ブラックオリンピア(4番・オーベルシュタイン):(……残存エネルギー、計算通り。ここからが私の、合理主義者としての真骨頂だ)
ブラックオリンピア(4番・オーベルシュタイン)は内ラチ沿いの緑の絨毯を、滑るように、一切のブレなく加速した。 息遣いは機械のごとく乱れず、瞳孔は寸分違わずゴール板という名の戦術目標を捕捉している。 テルヒコウ(6番・アッテンボロー)の推進音が急激に重くなるのを、彼の冷徹な両耳が確実に捉えた。
テルヒコウ(6番・アッテンボロー):「やっべぇ! 完全なガス欠だ! 俺の辞書に持久力って文字を書き忘れた奴はどこのどいつだ!」
ブラックオリンピア(4番・オーベルシュタイン):「自明の理だ。二ハロン目のオーバーペースという過失が、今になって負債として貴様の馬体に重くのしかかっている」
テルヒコウ(6番・アッテンボロー):「るせえ! 理屈で走って楽しいかよ! 俺は最後まで、この負け戦を踊り狂ってやるぜ!」
ブラックオリンピア(4番・オーベルシュタイン):「勝手に踊るがいい。私は最短航路にて、ダービーへの優先出走権という『事実』だけを回収する」
その時、鼓膜を劈くような轟音が外側から襲いかかってきた。 地鳴りのような蹄の響きが、府中星系を激しく震わせる。
ゴーイントゥスカイ(16番・ラインハルト):(見ろ、全宇宙が私に道を開けている。この圧倒的な光景を――!)
ゴーイントゥスカイ(16番・ラインハルト)だ。 大外へと転進し、完全なる自由を手に入れた彼は、一切の障害を排した真空の空間を、金色の流星となって駆け上がってくる。 上がり三ハロン、三十三秒四――それは物理演算の限界に挑むような、暴力的ですらある末脚であった。 その斜め後方、一ミリの誤差もなく随伴する紅蓮の影――タイダルロック(7番・キルヒアイス)が、主君の航跡をピタリと追走していた。
タイダルロック(7番・キルヒアイス):「ラインハルト様、見事な進路確保です。ですが、私の歩幅が僅かに及ばず……あなたが風の抵抗を受ける前に、その盾となれなかったこと、お許しください」
ゴーイントゥスカイ(16番・ラインハルト):「不要だ、キルヒアイス。この程度の風、私の覇気を煽る心地よきそよ風に過ぎん。私より前を航行する不敬な輩を、今ここですべて薙ぎ払ってくれる!」
タイダルロック(7番・キルヒアイス):「あなたに相応しいのは、銀河の頂点(先頭)の景色だけ。ならば私は、背後より迫る刺客をこの脚で沈めましょう」
ゴーイントゥスカイ(16番・ラインハルト):「フン、好きにしろ。ただし、私より先にゴールという名の玉座へ辿り着くことだけは、たとえ貴様であっても許さぬぞ!」
残り四百メートル。 ブラックオリンピア(4番・オーベルシュタイン)の冷徹なる計算式に、修正不能な「ノイズ」が走り始めた。
ブラックオリンピア(4番・オーベルシュタイン):(……計算が合わん。前方の馬群との相対速度が縮まらない。後続、特にあの二頭の出力が、システムの想定値を遥かに凌駕しているのだ)
最短距離を突き進むブラックオリンピア(4番・オーベルシュタイン)の真横を、外から凄まじい脚力――『双璧の叛逆(ヘテロクロミア・エッジ)』を伴ってノチェセラーダ(11番・ロイエンタール)が通り過ぎていく。 さらにその後方、視界の最果て。大外の彼方から、一筋の光子魚雷のごとく飛来する影があった。 ミッキーファルコン(5番・ユリアン)である。
ミッキーファルコン(5番・ユリアン):(……前の先輩たちが壁になって、進路(コース)が見えない。でも、僕だって、ヤン提督に教わったんだ。やればできるんだ!)
蹄が芝を深く抉り、土塊が光速で後方へと弾け飛ぶ。
上がり三ハロン、三十三秒一。戦域内最速の末脚が、府中のターフを「ヤング・イーグル」の鋭利な爪で切り裂く。
ミッキーファルコン(5番・ユリアン):「まだです! まだ僕のエネルギーは残っています! 先輩たちの背中、絶対に……絶対に捉えてみせます!」
ブラックオリンピア(4番・オーベルシュタイン):「最後方からの単騎突撃か……無謀の極みだな。空気抵抗のロスを計算できないのか、この小僧は」
ミッキーファルコン(5番・ユリアン):「計算なんて分かりません! ヤン提督なら『適当なところで逃げちゃえ』って言うかもしれないけど……今の僕は、一歩でも前に行きます!」
ブラックオリンピア(4番・オーベルシュタイン):「……理解不能だ。だが、その非論理的な推進力は、将来的な『脅威』としてデータに記録しておこう」
残り二百メートル。 ゴーイントゥスカイ(16番・ラインハルト)が、ついに戦域の頂点(先頭)へと躍り出た。 金色のたてがみが西風に舞い、銀河の果てにある栄光を掴み取らんと、その前脚が空間を切り裂き、未来をたぐり寄せる。
ゴーイントゥスカイ(16番・ラインハルト):(……この程度の坂で私の野心が止まるか? ターフを、そして全宇宙を黄金色に染め上げてくれる!)
タイダルロック(7番・キルヒアイス)が、四分の三馬身差という「影」として、至近距離で食らいつく。 内からブラックオリンピア(4番・オーベルシュタイン)が冷徹な航路を突いて迫るが、二頭の覇者が生み出す圧倒的な熱量に弾き返される。
地鳴りのような大歓声の中、先頭でゴール板という名の「皇帝の座」を駆け抜けたのは、金色の覇王であった。
レース後。 荒い息を吐きながら、各馬が検量室前へと引き上げてくる。 傾いた西日が、彼らの汗にまみれた馬体を、戦士を労う琥珀色の光で照らし出していた。
ゴーイントゥスカイ(16番・ラインハルト):「何をしている、前方の艦……馬め。私の視界を遮る不敬を、いつまで続けるつもりだったのだ」
テルヒコウ(6番・アッテンボロー):「へっ、十四着の負け犬に文句言ってどうすんだよ。勝ったんだから機嫌直せっての」
ゴーイントゥスカイ(16番・ラインハルト):「貴様のような道化に構う暇はない。だいたい、この程度の賞金(軍資金)で、私の魂が買えると思うなよ。私の目的はさらに先にある」
テルヒコウ(6番・アッテンボロー):「ハハハ! 欲張りな王様だぜ。せいぜい、次の大きな舞台……ダービーってやつで、俺みたいなゲリラに足元すくわれないように気をつけな!」
その横で、タイダルロック(7番・キルヒアイス)が、静かに瞬きを繰り返していた。
タイダルロック(7番・キルヒアイス):「砂が目に入りますね。ラインハルト様の美しい瞳に、この砂が飛ばなければ良いのですが……」
ブラックオリンピア(4番・オーベルシュタイン):「無意味な危惧だな。すでに戦闘は終了している。これ以上の視力低下という損害(リスク)が発生する確率は、限りなくゼロに近い」
タイダルロック(7番・キルヒアイス):「……あなたには分からないでしょうね。結果以前に、彼を守ることこそが私の存在意義なのですから」
ブラックオリンピア(4番・オーベルシュタイン):「三着か。……ダービーへの優先出走権という『結果』のみを正当に評価しよう。それ以外の情緒的な議論は、私には不要だ」
少し離れた場所で、ミッキーファルコン(5番・ユリアン)がうなだれている。 鼻先から滴る汗が、戦場に降る無情な雨のように芝を濡らした。
ミッキーファルコン(5番・ユリアン):「あぁ、もう! 届きませんでした……。イゼルローンへ戻ったらまた、ヤン提督との反省会と、厳しいトレーニングのやり直しですね」
ノチェセラーダ(11番・ロイエンタール):「ふん、届かないか。美学に欠ける走りをしてしまったな。泥を被り、他者の後塵を拝するのは、私の性に合わん」
ミッキーファルコン(5番・ユリアン):「ノチェセラーダ先輩は四着で美学とか言ってますけど……僕はもう、ただ熱い紅茶を飲んで、ゆっくり休みたいです……」
ノチェセラーダ(11番・ロイエンタール):「……あのアカ(キルヒアイス)が邪魔だ。奴が不動の随伴艦として控えている限り、あの金髪の牙城は一分たりとも崩せんか。若造、今はその悔しさを噛み締めておけ。それが次の戦場(レース)で、貴様の剣を鋭くする」
府中の空に、勝者と敗者の交錯する息遣いが、星間物質のように溶けていく。 彼らの鋭い視線の先には、すでに一ヶ月後の『日本ダービー』という名の、未踏の宇宙が、そして誰も見たことのない銀河の覇権が広がっていた。
ナレーション:「銀河の歴史が、また一馬身……」
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