第1ブロック;戦域への接続(デプロブ)
東京競馬場、芝一六〇〇メートル。 初夏の陽光がジリジリと照りつける緑のターフは、連射で灼けついた実弾銃のバレルのように熱を帯びている。 風に舞う青草の匂いは、どこか硝煙の香りに似て、鼻腔を鋭く刺激した。 ゲート裏――そこは、出撃(デプロブ)を待つ戦士たちが、己の脚という弾丸を静かに装填する戦域(エリア)だった。
ロデオドライブ【キリト】:(……見えている。他馬が放つ殺意の弾道予測線(バレットライン)は、すべて俺の反応速度の内側だ。あとはこの光剣で、運命ごと切り裂く) 17番、ロデオドライブ(キリト)が、ゲートの檻の中で、システム・ログを読み取るかのように静かに呼吸を整えていた。 漆黒の馬体を深く沈み込ませ、その双眸には、既に勝利ログの最終行が焼き付いている。
ロデオドライブ【キリト】:「銃の世界で剣を使うのが、そんなにおかしいか……? 」 ロデオドライブ【キリト】:「悪いが、この光なら、加速(アクセラレーション)の果てに弾丸すら置き去りにする」 彼は、フォトンソードの起動スイッチを押すかのように、前脚で力強くターフを掻いた。
アドマイヤクワッズ【レン】:「ちょっと黒い人! 余裕ぶってると、開始一秒でサブマシンガンの餌食になっちゃうからねっ!」 隣の枠から、ピンク色のオーラを放つ小柄な影が、挑発的にステップを踏む。 11番、アドマイヤクワッズ(レン)だ。
ロデオドライブ【キリト】:「蜂の巣だと? 俺の反応速度(スタッツ)に、お前の弾丸程度で、俺を捉えられると思うな」 ロデオドライブが鼻で笑って視線を外すと、アドマイヤクワッズは地団駄を踏んで砂を飛ばした。
アドマイヤクワッズ【レン】:「うーっ、ムカつく! ピーちゃん、スタートと同時にフルバーストだよっ!」 マルガイユウファラオ【ピトフーイ】:「やめとけ。開幕で無駄弾を撃つと、最後にデッド・ラインを越えられずに泣きを見るのはお前だぞ」 17着候補、マルガイユウファラオ(ピトフーイ)が、狂気を孕んだ瞳で隣の二人を冷笑する。 アドマイヤクワッズ【レン】:「うるさいうるさい! 速いのは正義なんだからね! ピーちゃんと一緒に、絶対にぶっちぎってやるんだから!」
そんな三人の騒がしいやり取りを、少し離れた枠から高倍率スコープ越しに見つめる者がいた。 16番、アスクイキゴミ(シノン)が、氷のような視線で三人の「急所」を射抜く。
アスクイキゴミ【シノン】:「……素人は黙ってなさい。私の有効射程(レンジ)で騒ぐなら、まとめて撃ち抜くわよ」 アドマイヤクワッズ【レン】:「なんだとぉ! 狙撃手なんて、近づいてゼロ距離でドカンしてやるんだから!」 アドマイヤクワッズが噛み付くが、アスクイキゴミは表情一つ変えない。
アスクイキゴミ【シノン】:「……試してみる? あなたがその足を踏み出す前に、ヘカートの弾丸でその額を確実に貫いてあげる」 アドマイヤクワッズ【レン】:「ひえっ……冗談の通じないガチの目つきだよぉ……」
アスクイキゴミ【シノン】:(落ち着け。心拍数を一定に保ち、最も効率的な弾道をミリ単位でなぞるんだ) アスクイキゴミは深く息を吐き、ターフの風速と湿度を脳内で精密に計算する。
ガシャンッ! けたたましい金属音と共に、銃撃戦(レース)の火蓋が切られた。
第2ブロック;バレット・パーティー(道中)
最初の1ハロンは12秒3。誰もが牽制し合う静かな立ち上がりかと思われた、まさにその直後だった。
マルガイユウファラオ【ピトフーイ】:「あははははっ! 最高のスリルだね! さあ、地獄の舞踏会を始めようか!」 2番、マルガイユウファラオ(ピトフーイ)が、狂ったような哄笑を上げて先頭に躍り出る。
マルガイユウファラオ【ピトフーイ】:(誰にも前は歩かせない。後続の連中が絶望する顔を、バックミラー越しに眺めるのがたまらないのよ!) マルガイユウファラオの刻んだ2ハロン目のラップは、常軌を逸した10秒5。マイル戦の理(システム)を破壊する、狂気のオーバーペースだ。
エコロアルバ【フカ次郎】:「おいおい、前の狂人(サイコ)、どんだけぶっ飛ばしてんだよ! 私も前衛でドッカンやりたいのに!」 後方15番手付近、密集する馬群の中でもみくちゃにされていた影が吠えた。10番、エコロアルバ(フカ次郎)である。
エコロアルバ【フカ次郎】:「力こそパワーだ! 前の連中ごと、私のグレネードでド派手に吹っ飛ばしてやりたいのに……全然射線が通んないじゃん!」 エコロアルバは豪快に砂煙を上げようと力むが、左右を固める分厚い馬壁に阻まれて身動きが取れない。
エコロアルバ【フカ次郎】:(クソッ、周りの連中が邪魔で、得意の爆撃ポイントまで上がれねえ! これじゃ不発弾になっちゃうよぉ!) エコロアルバは苛立ちを露わにし、巨大な馬体をぶつけて物理的にポジションをこじ開けようとする。
アスクイキゴミ【シノン】:「……バカね。あんな自殺志願者のペースに付き合ったら、終盤で確実に弾切れを起こすわ」 中団で冷静に息を潜めるアスクイキゴミ(シノン)は、スコープ越しに前方の狂乱を見つめていた。 アスクイキゴミ【シノン】:(私はここから動かない。弾道予測線を信じて、冷たくなった獲物を狙撃するだけ。……心拍数、正常)
一方、先頭のマルガイユウファラオはさらに容赦なく加速を続ける。 3ハロン目は10秒9。息を入れる隙を一切与えない、完全な死合(デスゲーム)の様相を呈していた。
アドマイヤクワッズ【レン】:「行っけぇぇぇPちゃん! 前の連中を全滅させるよっ!」 11番手から、アドマイヤクワッズ(レン)が小刻みな超高速ピッチで、隙間を縫うように進出する。
エコロアルバ【フカ次郎】:「おいチビ! 私の射線(ルート)をウロチョロするな! 踏み潰して爆破するぞ!」 エコロアルバが後方から怒鳴りつけるが、アドマイヤクワッズは軽やかに尻尾を振って挑発した。
アドマイヤクワッズ【レン】:「のろまの重戦車には、ピンクの悪魔のスピードは一生捕まえられないよーだ! お先にー!」 エコロアルバ【フカ次郎】:「んだとコラ! あとで絶対にグレネードの雨を降らせてやるからな!」
そんな硝煙立ち込める乱戦の中、最後方の14番手には、不気味な静寂を保つ影があった。 ロデオドライブ(キリト)である。
ロデオドライブ【キリト】:(14番手……さすがに後方に下げすぎたか。まあ、切り伏せる対象が多い方が、やり甲斐(クリア報酬)がある) 彼は焦る様子もなく、前方で繰り広げられる銃撃戦の火線を冷静に俯瞰していた。
アドマイヤクワッズ【レン】:「黒い人、置いていかれちゃってるよ! そのままそこでフリーズしてなよね!」 アドマイヤクワッズが外目へ位置を上げながら、通信を切るかのように余裕の挑発を飛ばす。
ロデオドライブ【キリト】:「……ふん。弾丸は撃ち尽くした後に、最大の隙(硬直)が生まれるんだよ」 ロデオドライブは低く呟き、フォトンソード(末脚)のエネルギーを、回路が焼き切れる寸前まで充填し始めた。
第3ブロック;スターバースト・ストリーム(最終直線)
魔の第4コーナー。 東京競馬場が誇る広大な直線が、彼らの前に広がる。それは剣士と銃使いたちにとって、絶望的な長さだ。
マルガイユウファラオ【ピトフーイ】:「あはははっ! さあ、弾切れで泣き叫ぶ時間だよぉ!」 先頭を狂走していたマルガイユウファラオが、哄笑を上げる。だが、その脚取りは既に限界を迎え、火薬の匂いと共に失速していく。
アドマイヤクワッズ【レン】:(直線の混戦は、Pちゃんと一緒にピョンピョン駆け抜けるよ!) 中団のインコースから、アドマイヤクワッズ(レン)が飛び出した。 マルガイユウファラオ【ピトフーイ】:「うるさいねぇ! 邪魔ならアタシの屍を越えていきなよ!」 アドマイヤクワッズ【レン】:「あっかんべー! 屍になんか付き合ってられないよーだ!」 アドマイヤクワッズは舌を出し、超高速ステップで内側を縫っていく。
その遥か外側、12番手から大外へ持ち出した影があった。 アスクイキゴミ(シノン)である。 アスクイキゴミ【シノン】:「……ターゲット・ロック。そこから逃げられると思わないことね」 冷徹な計算に基づき、氷の精神でスコープの焦点を合わせる。
アドマイヤクワッズ【レン】:「うわっ、外からシノンが撃ってきた! でも内側は私の独壇場だよ!」 アドマイヤクワッズが内から外へ向かって牽制の声を飛ばす。 アスクイキゴミ【シノン】:「チマチマと内を回るピンクのチビは、まとめて撃ち抜くわよ」 アスクイキゴミは表情一つ変えず、ヘカート・バレットの構えを取る。
直線距離、五二五メートル。 アスクイキゴミ【シノン】:「冷たいうちに撃ち抜く。……それが、私の流儀よ」 アスクイキゴミが、上がり三三秒五という凄まじい狙撃を開始した。外から次々と先行馬を貫き、アドマイヤクワッズとの差を詰めていく。
エコロアルバ【フカ次郎】:「おいおい嘘だろ!? 隣の奴が斜行してきて、撃ち損ねたじゃねえか! ふざけんな、私の派手な見せ場を潰す気か! どけえええ!」 一方、後方16番手付近では、エコロアルバ(フカ次郎)が悲鳴を上げていた。
誰もが、外のアスクイキゴミか内のアドマイヤクワッズかと思った瞬間。 14番手の大外、ロデオドライブ(キリト)の双眸が鋭く発光した。
ロデオドライブ【キリト】:(予測線は完全に見えた。……ここからは、俺の距離だ!) ロデオドライブ【キリト】:「悪いな、シノン。……その首、俺がもらう」 光剣が抜かれるような高周波の共鳴音が、ターフを劈く。 上がり三三秒三。全馬の弾道を置き去りにする、スターバースト・ストリーム(十六連歩)の爆発だ。
アスクイキゴミ【シノン】:「なっ……! キリト!? いつの間にそこまで!?」 アスクイキゴミが驚愕に目を剥き、ライフルの銃身を限界まで熱する。 ロデオドライブ【キリト】:「銃の世界で剣を使うのが、そんなにおかしいか……? この光なら、お前の弾丸よりも速い!」 ロデオドライブが黒い残像を引き連れ、アスクイキゴミの横へ並びかける。
アスクイキゴミ【シノン】:「ふざけないで! 私の射程で、剣なんかに撃ち負けるもんですか!」 アスクイキゴミが歯を食いしばり、必死に並走して食らいつく。 ロデオドライブ【キリト】:「やれるものならやってみろ! 俺の反応速度で、全て切り落としてやる!」 アスクイキゴミ【シノン】:「……墜ちなさいっ!」 ロデオドライブ【キリト】:「……切り裂く!」
一分三一秒五。 電光掲示板に灯トのは、ハナ差という究極の極小マージン。 最後方から弾丸を切り裂いたロデオドライブが1着。大外から精密な狙撃を見せたアスクイキゴミが2着。内からピンクの機動力で粘り込んだアドマイヤクワッズが3着。
第4ブロック;ログアウト(検量室前)
ロデオドライブ【キリト】:(ハナ差……。最後の最後でシステムのラグを疑ったぞ。心拍数が戻らん) ロデオドライブ(キリト)は、全身から湯給を上げながら、目に見えない光剣を収める仕草をした。
その横で、アスクイキゴミ(シノン)が悔しそうに前肢をターフに叩きつける。 アスクイキゴミ【シノン】:(中団からの射線は確保できていたはずなのに。……計算外だったわ。あと一ミリ……! 剣で弾丸を切るなんて、やっぱりチートじゃないの!) ロデオドライブ【キリト】:「チートじゃない.俺の反応速度が、お前のトリガーを上回っただけだ」 ロデオドライブが涼しい顔で言い放つと、アスクイキゴミは鋭く睨みつける。 アスクイキゴミ【シノン】:「それがチートだって言ってるの! 次は眉間を確実にぶち抜いてやるわ!」
そこへ、小柄なアドマイヤクワッズ(レン)がピョンピョンと跳ねて近づいてきた。 アドマイヤクワッズ【レン】:「二人とも速すぎだよぉ! 内側の最短ルートを通ったのに、負けちゃった! Pちゃんも泣いてるよ!」
アスクイキゴミ【シノン】:「お前がチョコマカ動くから、私の照準が少しブレたのよ。邪魔しないで」 アスクイキゴミが八つ当たり気味に言うと、アドマイヤクワッズも頬を膨らませる。 アドマイヤクワッズ【レン】:「なんだとぉ! そっちこそ大外から生意気に撃ってくるからでしょ!」
エコロアルバ【フカ次郎】:「おーい! 私の見せ場はどうなったんだよ!」 泥だらけのエコロアルバ(フカ次郎)が、豪快に笑いながら合流した。 エコロアルバ【フカ次郎】:「斜行さえなけりゃ私のグレネードで全員ぶっ飛ばしてたのによ! 次は開幕から爆撃で、このターフごと吹き飛ばしてやるからな!」
マルガイユウファラオ【ピトフーイ】:「あはははっ! 最高、最高の死合だったねぇ!」 最後尾からフラフラと帰還したマルガイユウファラオ(ピトフーイ)が、不気味に笑う。 マルガイユウファラオ【ピトフーイ】:「次は私が、あんたたちの頭蓋骨を直接噛み砕いてあげるからね……!」
東京競馬場に、硝煙の匂いと戦士たちの笑い声が溶けていく. 銃と剣が交錯したマイルの死闘は、熱狂のログを残して幕を閉じるたのであった。
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