冬の京都、砂塵が舞い上がるダートの結界。 第31回プロキオンステークスのゲートが開く直前、 そこにはただの競走馬ではない、異能を宿した「術師」たちが集っていた。
マーブルロック【鹿紫雲一】:「おい、随分と静かじゃないか。 もっと死ぬ気で来いよ、雑魚どもが」
マーブルロック3番「牡6」が、全身から火花を散らして嘶く。
マーブルロック【鹿紫雲一】:「400年前の砂に比べりゃ、今の京都は随分と甘ったるいぜ」 マーブルロック【鹿紫雲一】:「俺の放電「ハイペース」に焼き殺される準備はできてるか?」
その隣、外枠から不敵な笑みを浮かべるのは、 サンデーファンデー16番「牡6」だ。
サンデーファンデー【秤金次】:「ハハッ! マーブルの旦那、景気がいいじゃねぇか! 今日の俺は『座ってる』んだ。確変の予感がして止まらねぇ!」
サンデーファンデー【秤金次】:「11番人気? 最高に滾るギャンブルじゃねぇか、オイ!」 サンデーファンデー【秤金次】:「全ツッパでジャックポットを引き当ててやるぜ!」
ルシュヴァルドール【日車寛見】:「サンデー君、騒がしいですよ。 ここは法廷「コース」です。静粛に願いたい」
ルシュヴァルドール1番「牡5」が、 冷徹な瞳で最内枠から二人を睨みつけた。
サンデーファンデー【秤金次】:「法廷? ケッ、お堅いねぇ弁護士先生! この砂の上じゃ、熱くなった奴が正義なんだよ!」
ルシュヴァルドール【日車寛見】:「……理解不能ですね。 法「ルール」を無視した無謀な突進は、過失致死罪に相当しますよ」
ロードクロンヌ【五条悟】:「あー、もう! 二人ともうるさいってば。 せっかく僕が一番人気で華を持たせてあげてるんだから、 もっと感謝して走ってくれないかな?」
ロードクロンヌ13番「牡5」が、 目隠しでもしているかのような余裕の表情で割り込む。
ロードクロンヌ【五条悟】:「大丈夫、僕最強だから。負けるイメージなんて一ミリも湧かないよ」 ロードクロンヌ【五条悟】:「さて、少しだけ『本物の競馬』ってものを教えてあげようかな」
ブライアンセンス【伏黒恵】:「出たよ、最強……。 アンタがいるだけで、このレースの難易度がバグるんだ」
ブライアンセンス9番「牡6」が、影の中から呟く。
ブライアンセンス【伏黒恵】:「……なんで俺の時だけこんなに砂が深いんだ。不平等だろ」 ブライアンセンス【伏黒恵】:「影に沈め。俺は、俺が信じる勝利だけを掴み取る」
セラフィックコール【乙骨憂太】:「伏黒君……じゃなかった、ブライアン君。 そんなに自分を追い詰めなくても、僕たちがついてるよ」
最後方から、セラフィックコール15番「牡6」が、 優しすぎる笑みを浮かべて声をかけた。
ブライアンセンス【伏黒恵】:「……アンタの追い込みは、優しすぎて逆に怖いんだよ」
セラフィックコール【乙骨憂太】:「失礼だな、純愛だよ。 僕はただ、みんなの期待に応えたいだけなんだ」
セラフィックコール【乙骨憂太】:「でも、邪魔するなら……少しだけ、本気で捻り潰しちゃうよ?」
ゲートが轟音と共に開いた。
マーブルロック【鹿紫雲一】:「放電「スパート」開始ィィッ!!」
マーブルロックが猛然と飛び出す。 ダート戦とは思えない電光石火の加速。 2ハロン目のハロンタイムは驚愕の11.3秒。 芝のG1かと見紛うほどの激流が、京都の結界を支配する。
サンデーファンデー【秤金次】:「マーブルの旦那! 飛ばしすぎだ! だがそれがいいッ!!」
サンデーファンデーが、確変のリーチ演出を脳内で再生しながら追走する。
サンデーファンデー【秤金次】:「このスピード……脳汁が出るぜ! 止まるな俺の確変!」
ルシュヴァルドール【日車寛見】:「……やはり、被告人マーブルロックは自滅を望んでいるようですね」
ルシュヴァルドールが、最短距離のインコースを淡々と確保する。
ルシュヴァルドール【日車寛見】:「11.3秒。このペースは、後方集団にとっての死刑宣告だ」 ルシュヴァルドール【日車寛見】:「だが、私だけは法「イン」の恩恵を受けて、生き残らせてもらう」
先行集団のすぐ後ろ、特等席にいるのはロードクロンヌだ。
ロードクロンヌ【五条悟】:「ねぇ、前の二人の砂、僕のまつ毛に当たるんだけど。 無下限「ガード」を貫通してくるなんて、失礼な砂だね」
ロードクロンヌ【五条悟】:「ま、このペースなら前は勝手に潰れる。僕は3番手で昼寝かな」 ロードクロンヌ【五条悟】:「競馬民のみんな、僕に賭けて正解だよ。愛してるよ、なんてね」
その後ろ、中団で影を潜めるのはブライアンセンス。
ブライアンセンス【伏黒恵】:「……前の奴ら、狂ってやがる。 だが、俺はこの位置で影に溶け込み、好機を待つだけだ」
ブライアンセンス【伏黒恵】:「プラス4キロが重いな。だが、この重みが俺の覚悟だ」 ブライアンセンス【伏黒恵】:「布瑠部由良由良……いや、まだだ。まだ出すな……!」
最後方では、セラフィックコールが大きな馬体を揺らしていた。
セラフィックコール【乙骨憂太】:「あぁ、やっぱり前が遠いなぁ。 でも、リカちゃん……じゃない、僕の筋肉が叫んでるんだ」
セラフィックコール【乙骨憂太】:「斤量58キロ。これは愛の重さだ。耐えてみせるよ」 セラフィックコール【乙骨憂太】:「直線で、みんなまとめて飲み込んであげるからね」
第3コーナー。激流の後に訪れた、一瞬の静寂。 ラップが12.8秒まで落ち、各馬が術式の再構築「息入れ」を始める。
マーブルロック【鹿紫雲一】:「おい! なんで静かになんだよ! もっと火花を散らせッ!!」
マーブルロックが、放電しすぎて焦げ付いた体を引きずりながら叫ぶ。
サンデーファンデー【秤金次】:「旦那、もう電池切れか? ここからは俺の『大当たり演出』の時間なんだよ!」
サンデーファンデーが、外からマーブルロックを飲み込みにかかる。
ロードクロンヌ【五条悟】:「サンデー君、少し早すぎるんじゃない? 欲を出すと、せっかくの確変も『パンク』しちゃうよ?」
ロードクロンヌが、羽が生えたような軽やかさで外から並びかける。
サンデーファンデー【秤金次】:「最強、テメェ……! 横から冷や水ぶっかけてんじゃねぇ!」
ロードクロンヌ【五条悟】:「冷や水じゃないよ。 僕という太陽が、君を照らしてあげてるんだ。 感謝してよ。ほら、ゴールはあそこだよ?」
サンデーファンデー【秤金次】:「納得いかねぇ……! だが、この熱「ノリ」だけは譲れねぇんだよ!」
第4コーナー、運命の進路選択。
ルシュヴァルドール【日車寛見】:「判決を下します。 君たちの進路を……『没収』する」
ルシュヴァルドールが、バテたマーブルロックを内側から一刀両断。
ルシュヴァルドール【日車寛見】:「経済コースこそが正義。 最短距離を通った者に、勝利の判決を!」
ブライアンセンス【伏黒恵】:「……影から、逃げられると思うなよ」
ブライアンセンスが、前の馬たちが作る壁の隙間に、 文字通り影となって滑り込んでいく。
ブライアンセンス【伏黒恵】:「直線だ。ここで俺がやらなきゃ、誰がやるんだ……!」
セラフィックコール【乙骨憂太】:「みんな、ごめんね。 少しだけ……本気で走るよ」
大外から、セラフィックコールが呪力「エネルギー」を爆発させる。
セラフィックコール【乙骨憂太】:「失礼だな、純愛だよ。僕の愛を、受けてみてよ!」
直線。 京都の平坦な馬場が、命を削る削合の場と化す。
サンデーファンデー【秤金次】:「キタキタキタぁ! ジャックポットだぜぇぇ!!」
サンデーファンデーが、粘りに粘る。
サンデーファンデー【秤金次】:「クビ差……! このクビ差が、俺の人生の全てだ!!」
ルシュヴァルドール【日車寛見】:「有罪「ギルティ」! サンデーファンデー、君の逃げはここで終焉だ!」
内からルシュヴァルドールが、鋭い一刺しを繰り出す。
ロードクロンヌ【五条悟】:「……甘いよ、二人とも。 僕という『最強』を忘れてもらっちゃ困るな」
ロードクロンヌが、真ん中から悠然と、 しかし圧倒的な圧力を持って突き抜けていく。
ロードクロンヌ【五条悟】:「術式反転……加速『赫「あか」』!」 ロードクロンヌ【五条悟】:「なんてね、ただ普通に首を伸ばしただけだよ。ほら、クビ差」
サンデーファンデー【秤金次】:「ロードクロンヌ! テメェ……! その余裕が鼻につくんだよ!」
サンデーファンデーが、死に物狂いで食らいつく。
ロードクロンヌ【五条悟】:「おっと、まだ元気だね。 でも、僕の無下限「実力」には、一生届かないよ?」
ルシュヴァルドール【日車寛見】:「……認めない。 こんな理不尽な走り……法「ルール」が許さない!」
ルシュヴァルドールが、内ラチ沿いから血を吐くような執念で迫る。
ブライアンセンス【伏黒恵】:「……俺もいる。影の中に沈め!」
ブライアンセンスが、さらにその内側から強襲。 四頭が、一団となってゴール板へとなだれ込む。
セラフィックコール【乙骨憂太】:「パワーーー!! 愛だよ、愛なんだぁぁ!!」
大外からは、セラフィックコールが鬼のような形相で追い込んでくる。
セラフィックコール【乙骨憂太】:「届かない……? いや、僕は、みんなを救わなきゃいけないんだ!」
セラフィックコール【乙骨憂太】:「でも、前の四頭が……みんな、凄くいい顔をしてる……」
ゴール。
わずか数センチ、数ミリの決着。 ロードクロンヌが、サンデーファンデーをクビ差で競り落とし、 「現代最強」の称号を改めて砂の上に刻んだ。
ロードクロンヌ【五条悟】:「ハハッ、少しだけ本気出しちゃった。 あー、疲れた。僕、もう帰って甘いもの食べていいかな?」
ロードクロンヌが、砂にまみれた顔で、 しかし誰よりも美しい嘶きをあげた。
サンデーファンデー【秤金次】:「クソッ……! 確変終了かよ。 だが、最高の『熱「ノリ」』だったぜ。 また回そうじゃねぇか!」
サンデーファンデーが、2着という結果を笑い飛ばす。
ルシュヴァルドール【日車寛見】:「……妥当な判決、というところですか。 ですが五条……いえ、ロードクロンヌ。 次は控訴させてもらいますよ」
3着のルシュヴァルドールが、静かに土を払った。
ブライアンセンス【伏黒恵】:「……クビ、クビ、クビか。 不平等だな。だが、俺はまだ、影の中で生き続ける」
4着のブライアンセンスが、悔しさを噛み締めながら前を見据える。
セラフィックコール【乙骨憂太】:「みんな、お疲れ様。 やっぱり五条先生は、ずっと遠くにいるんですね」
5着に飛び込んだセラフィックコールが、 負けた馬たちを労いながら、優しく微笑んだ。
ロードクロンヌ【五条悟】:「あー、もう! みんな僕を褒めすぎだよ。 ま、僕が最強なのは生まれつきだから、仕方ないんだけどね!」
ロードクロンヌ【五条悟】:「次はもっと楽に勝ちたいな。 砂遊びは、もうお腹いっぱいだよ」
ロードクロンヌ【五条悟】:「でも……この『結界』の中で走るのも、悪くない気分だね」
夕暮れの京都競馬場。 砂塵が消えた後には、ただ一つの事実だけが残っていた。
ロードクロンヌ。
彼が通り過ぎた後の砂の上には、 誰にも侵せない「最強」の轍が、どこまでも続いていた。
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