機動戦士ウマ息子 弥生賞:自由(フリーダム)すぎる末脚に、ボクは泣きながら種を割る

弥生賞の激闘(ガンダムSeed編)
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弥生賞の激闘 挿絵

CHARACTER DATA & PILOT REGISTRY

【1着】バステール Model: キラ・ヤマト
【2着】ライヒスアドラー Model: アスラン・ザラ
【3着】アドマイヤクワッズ Model: イザーク・ジュール
【4着】タイダルロック Model: ディアッカ・エルスマン
【5着】モウエエデショー Model: ムウ・ラ・フラガ
【逃げ】メイショウソラリス Model: ラウ・ル・クルーゼ

「馬名【キャラ名】有」 「VOICEVOX: 四国めたん」「VOICEVOX: 玄野武宏」「VOICEVOX: 雀松朱司」「VOICEVOX: 青山龍星」「VOICEVOX: 白上虎太郎」「VOICEVOX: 剣崎雌雄」「VOICEVOX: †聖騎士 紅桜†」
(風が冷たい。ターフの匂いが鼻を突く。ボクは今、ゲートの中にいる)
暗闇の中で身を震わせているのは、馬番8番牡3のバステールだ。 周囲の殺気立った空気に、彼は今にも泣き出しそうになっていた。 「どうして皆、こんなに血走った目をしているんだ……!」 (ボクだって、走りたくて走ってるわけじゃないのに……!) ガシャンッ、という無機質な金属音が鳴り響き、前方の扉が開く。 光の世界へ飛び出すのと同時に、一頭の影が矢のように飛び出した。

「走れ!競り合え!それが君たちの望んだ地獄だろう!?」 狂気に満ちた哄笑を響かせるのは、馬番2番牡3のメイショウソラリスだ。 (ハハハ!誰も来ないのか!私の背中を追う資格すらないのか!) スタート直後、ソラリスは常軌を逸した急加速を見せた。 最初の400メートルを通過するタイムは、なんと11秒0。 中山競馬場の急坂を全く無視した、自殺行為にも等しいペースである。

「貴様らぁ!俺の前に立つな!どけと言っているんだ!!」 怒号を上げながら好位をキープするのは、馬番6番牡3のアドマイヤクワッズだ。 (痛い!今、砂をかけたのはどいつだ!ぶち殺してやる!) 前を走る馬が蹴り上げる土塊が顔に当たり、彼は激怒していた。

「落ち着けクワッズ!今はそんなことをしている場合じゃない!」 中団から鋭い声でたしなめるのは、馬番4番牡3のライヒスアドラーだ。 (この距離、このペース……すべては計算通りだ。……行くぞ!)

「知るかそんなこと!俺の後塵を拝ませてやる!」 クワッズはアドラーの忠告を無視し、さらに前傾姿勢をとる。 「……分かった、お前がその気なら勝手にしろ!」 アドラーもまた、不快感を露わにして脚の回転を速めた。

第1コーナーから第2コーナーへの上り坂。 流石のソラリスも息が上がり、ペースが急激に落ち込み始めた。 「フン!やはり素人の逃げか。俺がいつでも料理してやる!」 (なっ……なんだあの外からの脚は!卑怯だぞ、正々堂々と内から来い!) クワッズが先頭を睨みつけていると、外側から不気味な気配が近づく。 最後方にいたバステールが、ゆっくりと、しかし確実に位置を上げていた。

「もうやめるんだ!これ以上、ボクに追い抜かせないでくれ!」 (砂が顔に当たる……痛いよ。みんな、もっと綺麗に走れないのかな) 泣き言を言いながらも、バステールの脚は恐ろしいほど滑らかだ。

「まーたバタバタやってんねぇ。ま、俺は俺のペースで行かせてもらうわ」 馬群の後方で薄笑いを浮かべるのは、馬番5番牡3のタイダルロックだ。 (おーおー、お熱いこって。これだからクラシック候補生ってのは……) 彼は前の馬たちの無駄な消耗を、冷徹なスナイパーの目で観察していた。

向正面の平坦な道に入り、息を入れた馬群のペースが再び上がり始める。 風を切り裂く音、蹄が芝を削る音、そして荒々しい息遣い。 五感が限界まで研ぎ澄まされる中、第3コーナーへ突入する。 「逃がさん!その進路は私が封鎖する!」 アドラーが動いた。中団から一気に好位へと押し上げていく。

「おいライヒスアドラー!そこをどけと言っている!」 クワッズが横目にアドラーを睨みつけ、威嚇するように吼えた。 「バステールが外から来ているんだぞ!文句があるならあいつに言え!」 「フン、泣くのは貴様らの方だ!全開で行くぞ!!」 クワッズは誰の言葉にも耳を貸さず、ただ自身の前だけを見据える。

そして運命の第4コーナー、小回りコースの遠心力が全身を襲う。 「これが君たちの限界だ!滅びの舞台へようこそ!」 ソラリスの脚は既に限界を迎え、ズルズルと後退を始めていた。 (ハハハ!スタミナが尽きていく!これが、私の望んだ結末だ!)

先頭集団が密集し、内側の進路が完全に塞がっていく。 その時、バステールの瞳の奥で、何かがパツンと弾けた。 「そこを、どいてよぉぉぉっ!!」 バステールは馬群の外側へ、強引なまでの斜行を見せた。 隣にいた馬番10番牡3のバリオスがたまらず体勢を崩し、外へと弾き出される。 (どうして道を譲ってくれないんだ!ボクはただ、前に行きたいだけなのに!) 無意識の暴力。それは勝負の世界では勝者の選択と呼ばれる。

最後の直線310メートル。目前には心臓破りの急坂が立ちはだかる。 「俺を誰だと思っている!誇りを見せてやるわ!」 クワッズが内側から抜け出し、先頭に躍り出ようとする。 (クソッ、クソッ、クソォォォ!芝の野郎、俺の脚を掴んで離しやがらねえ!) 急坂が彼のスタミナを容赦なく削り取っていく。

「ハイハイ、盛り上がってまいりました。そろそろ一発ぶち込みますかね」 タイダルロックが内を突こうとするが、前の馬が壁になり進路がない。 (ったく、前が詰まってんじゃねーよ。やる気あんのかね、全く) 進路を失い、彼は舌打ちをして無理やり外へ持ち出そうともがく。

「悪いな坊主ども!大人の走りってやつを教えてやるよ!」 最後方から大外をぶん回してくるのは、馬番7番牡3のモウエエデショーだ。 (おいおい、前の連中速すぎないか?ちょっとは手加減してくれよ)

だが、全てを置き去りにする閃光が、さらにその外を駆け抜けた。 「まだだ……まだ、ボクには届きゃいけないゴールがあるんだ!」 バステールだ。泣きじゃくりながら、彼は飛ぶように加速していく。 上がり3ハロン34秒9。他を圧倒する異次元の末脚。

「バステール……!お前が相手なら、私は手加減などしない!」 アドラーが中目から馬群を縫って猛追するが、その差は縮まらない。 (……脚が,重いな。メンテナンスが不十分だったというのか!?)

バステールが先頭でゴール板を駆け抜け、レースは決着した。 3/4馬身差でアドラーが続き、さらにクビ差でクワッズが飛び込む。 「チクショーッ!俺が、俺が一番前を走っていたのに!」 (なんであんな泣き虫に負けるんだ!納得いかんぞ!) クワッズの怒声が、夕暮れの中山競馬場に空しく響き渡る。

「どうして皆、競り合わなきゃいけないんだ!」 勝者であるはずのバステールは、なぜか悲痛な叫びを上げていた。 彼は自分が一番強いなどとは露ほども思っていないのだ。 ただ、走ることを強要された悲しき天才の涙だけが、芝生を濡らしていた。