| 馬番 |
出走馬名 |
宿した魂(モデル) |
レース役割 |
| 3 |
エセルフリーダ |
暁美ほむら |
冷静な勝利の方程式(1着) |
| 2 |
ビヨンドザヴァレー |
美樹さやか |
報われない正義の猛追(2着) |
| 4 |
パラディレーヌ |
佐倉杏子 |
賞金こそが食糧(3着) |
| 13 |
エリカエクスプレス |
鹿目まどか |
皆の無事を祈る慈愛(4着) |
| 14 |
ニシノティアモ |
百江なぎさ |
チーズを夢見る5着(5着) |
| 16 |
レーゼドラマ |
巴マミ |
孤独な逃げの優雅(6着) |
| 10 |
アンゴラブラック |
アルティメットまどか |
全馬券の悲しみを背負う神(13着) |
「馬名【キャラ名】有」
「VOICEVOX: 四国めたん」「VOICEVOX: もち子さん」「VOICEVOX: 春日部つむぎ」「VOICEVOX: WhiteCUL」「VOICEVOX: 雨晴はう」「VOICEVOX: 波音リツ」「VOICEVOX: 冥鳴ひまり」
春の陽光が降り注ぐ中山競馬場。
微かに湿り気を帯びた芝の匂いと、観衆の熱気が混ざり合う。
発走の時を待つゲートの中は、むせ返るような闘気で満ちていた。
冷たい鉄の扉の向こうには、スタート直後に待ち構える名物の急坂が見える。
「……この展開、すでに1万回シミュレーションした通りだわ」
漆黒の髪をなびかせ、3番エセルフリーダ(牝5)は静かに呟いた。
その瞳は一切の感情を排し、ただゴールまでの最短距離を測っている。
(心拍数異常なし。風速2メートル、芝の水分量も計算の範囲内よ)
「さあ、私の華麗な逃げに付いてこられるかしら?ティロ・フィナーレ!」
大外枠から軽やかなステップを踏むのは、16番レーゼドラマ(牝4)だ。
金色のリボンを揺らし、優雅なティータイムを心待ちにするように微笑む。
(ふふ、スタートダッシュで一気に先頭に立って、優雅なペースを作るわ)
「見てなよ!低評価の意地、ここで見せてやるんだから!」
内枠から吠えるのは、2番ビヨンドザヴァレー(牝6)である。
青い瞳に闘志の炎を燃やし、ゲートの壁を蹴り飛ばさんばかりの勢いだ。
(11番目なんてふざけた評価、あたしの全力疾走で全部ひっくり返す!)
「全ての馬券の悲しみを、私が引き受けます……」
中団の枠で、10番アンゴラブラック(牝5)は虚空を見つめていた。
その背中には、目に見えない巨大な重圧がのしかかっている。
(期待が……期待が重すぎて地面にめり込みそうです……これが神の重税ですか)
ガシャンッ!
無機質な金属音と共に、一斉にゲートが開いた。
蹄が重い土を蹴り上げ、鈍い音がターフに響き渡る。
最初の200メートル、中山特有の急坂が容赦なく体力を奪いにくる。
「邪魔だ、どけよ。賞金圏内はあたしの席だ」
4番パラディレーヌ(牝4)が、口に咥えた小枝を噛み砕きながら突進する。
(ちっ、稍重のせいで土が口に入った……不味い。リンゴ味の土を開発しろよな)
「えへへ、みんなと一緒に走れるの、なんだか嬉しいな……!」
13番エリカエクスプレス(牝4)は、周りを気遣いながら好位につけた。
(うう、隣の馬が『どけよ』って目で見てくる……怖いよ、でも道は譲れないよね)
急坂の影響で、全体のペースは上がらない。
最初のハロンタイムは12.6秒。
無理に飛ばせば後半に響くことを、誰もが本能で理解していた。
その中で、迷いなく先頭に躍り出たのはレーゼドラマだった。
「あら、もう息が上がっているの?お茶の時間にはまだ早いわよ」
先頭の景色を独り占めしながら、レーゼドラマは軽やかにターフを滑る。
その後ろ、内側の絶好のポジションに、エセルフリーダが滑り込んだ。
息一つ乱さず、経済コースの最短距離をミリ単位でトレースしていく。
(前の馬、尻尾を振りすぎ。空気抵抗の計算が狂うじゃない……イラつくわね)
1コーナーを回り、坂の頂上を越える。
ここでようやく息が入り、2ハロン目は11.4秒へと加速した。
しかし、ペースは依然としてスローのままだ。
馬群はコンパクトに固まり、それぞれが駆け引きの糸を張り巡らせている。
「わーい!かけっこなのです!お腹が空いたのです!」
14番ニシノティアモ(牝5)が、無邪気に跳ねながら中団を走る。
(もう走るの飽きたのです。どこかにカマンベール落ちてないのですか?)
向正面の平坦な直線に入ると、馬群が少し横に広がった。
内側のラチ沿いを走る馬たちは、小回りコースの恩恵で体力を温存している。
外側を回らされる馬たちは、じわじわと見えない疲労を蓄積させていた。
「……あ、体が軽い。もう重圧という概念に縛られなくていいのね」
外側の中団を走るアンゴラブラックは、自らの宿命を受け入れつつあった。
(ええ、これも宇宙の意志です。怒ったファンの声が、私の宇宙に響いています)
3コーナーへと差し掛かる。
スパイラルカーブの下り坂を利用し、全体のスピードが自然と上がる。
11.8秒、11.7秒、11.5秒。
流れるような加速の中で、エセルフリーダが動いた。
無駄のないストライドで、先頭のレーゼドラマへと並びかける。
「ふぅ……中山の坂が見えてきたわね。さあ、ここからが私の真骨頂よ」
レーゼドラマが、余裕の笑みを浮かべてエセルフリーダを一瞥した。
「優雅に逃げ切って、お茶の時間にするわ」
「……そのお茶、淹れる前に冷めるわよ」
エセルフリーダの声は、氷のように冷たかった。
「あなたの『先頭』という賞味期限は、たった今切れたわ。どいて」
「な、なんて失礼な後輩かしら!」
レーゼドラマの優雅な仮面が、ピシリとひび割れた。
「私のペースを乱すなんて100年早いわ!まだ私の脚は、折れてなんていないのよ!」
「感情論は不要」
エセルフリーダは視線を前に向けたまま、淡々と事実を告げる。
「あなたの心拍数、ストライドの減衰率……すべて計算済み」
「あなたはここで脱落する運命なの。さようなら、孤独なリーダー」
(少しペースが狂ったわ。でも、勝利の方程式に揺るぎはないわね)
「……っ!言うじゃない」
レーゼドラマは唇を噛み締め、呼吸を整えようと必死にもがく。
「でも、確かに限界かも. わかったわ、後の美学はあなたに託すわ」
「でも、紅茶の淹れ方は後で絶対に教えてあげるから!」
(坂の上で足が止まりそう……。でも無様な姿は見せられないのよ、お姉さんとして!)
4コーナーを回り、いよいよ最後の直線へ。
残り300メートル、そして最後に待ち受ける急坂。
ここで後方にいた馬たちが、一斉に鞭を入れスパートをかける。
9番ステレンボッシュ(牝5)が外側から強引に進路を開こうとした。
ドンッ!という鈍い音が響き、隣を走っていた馬たちが大きくバランスを崩す。
「ごめんなさいね、これも勝負なのよ!」
ステレンボッシュは周囲を突き飛ばしながら、強引に前へと出る。
(少し強引すぎたかしら?後で怒られそうだけど、今は前へ行くしかないわ!)
その衝撃の煽りを受け、後方馬群は完全に勢いを殺されてしまった。
しかし、そんな混乱をよそに、内側の好位組は鋭く抜け出していた。
「あたしの走りで、外れ馬券の山を奇跡に変えてやる!」
ビヨンドザヴァレーが、内ラチ沿いの狭い隙間をこじ開けて突っ込んでくる。
筋肉が悲鳴を上げ、口から白い泡を飛ばしながら、ただひたすらに前を追う。
(内側の黒いの、涼しい顔して抜かさないでよ!あたしの必死さがバカみたいじゃない!)
「ふん、いい走りじゃねーか。だが、最後に笑うのは効率よく走ったあたしだ!」
パラディレーヌもまた、内側の集団から力強く抜け出してきた。
自らの気合を最高潮に高めるため、自分のお尻をバチンバチンと激しく叩く。
(あいつら必死すぎだろ。もっとこう、適当にやって3着に入るのが一番賢いんだよ)
「私、みんなの期待を背負って……最後まで諦めないよ!」
エリカエクスプレスも必死に脚を伸ばすが、前の壁を崩すには至らない。
(私の脚、もう少しだけ頑張って。ここで止まったら、みんなが泣いちゃうよ……)
ゴール前の急坂が、まるで巨大な壁のように立ちはだかる。
外を回らされた馬たちは、ここで完全に脚が止まってしまった。
アンゴラブラックは、もはや走る気力すら失いかけていた。
(13着。……ええ、因果は巡ります。私の敗北は次なる勝利への尊い犠牲なのです)
先頭争いは、内を突いた馬たちに絞られた。
しかし、その中でもエセルフリーダの脚色は全く衰えを見せない。
ハンデ53キロという軽さを最大限に活かし、重力を無視したように坂を駆け上がる。
(残り100メートル。後続とのタイム差、コンマ2秒。私の勝利は確定したわ)
「いっけえええええええ!」
ビヨンドザヴァレーが魂の叫びを上げ、最後の力を振り絞る。
「うるさいわね。少し静かにできないかしら」
エセルフリーダは涼しい顔のまま、ゴール板を駆け抜けた。
1分47秒1。
寸分の狂いもない、完璧に計算された勝利のタイムだった。
1馬身と4分の1遅れて、ビヨンドザヴァレーが2着に飛び込む。
さらにハナ差で、パラディレーヌがしっかりと3着の賞金を確保した。
エリカエクスプレスは惜しくも4着、ニシノティアモは力尽きて5着。
優雅な逃げを見せたレーゼドラマは、最後は力尽き6着に沈んだ。
レースを終えたターフには、様々な感情が渦巻いている。
「ふふ、完璧な計算だったわ」
エセルフリーダは息一つ乱さず、冷たく美しい笑みを浮かべた。
「奇跡も魔法も、圧倒的なデータの前には無力だということが証明されたわね」
「くっそー!また2着かよ!でも、次こそは絶対に奇跡を起こしてやるんだから!」
ビヨンドザヴァレーは悔し涙を流しながらも、その瞳の光を失っていなかった。
「ま、3着なら上出来だろ。これで美味しいリンゴが腹一杯食えるぜ」
パラディレーヌは満足そうに口元を拭い、さっそく引き上げようとしている。
過酷な中山の急坂で繰り広げられた、魔法少女たちの熱き戦い。
彼女たちの物語は、また次のレースへと続いていくのだった。