虹の湖を後にした二人は、朝の光に包まれながら歩き出した。湖面に残る虹色の残響はまだ淡く揺らぎ、背中を押すように二人を見送っていた。
「わぁぁぁ!昨日の湖、ほんとにすごかったよねぇぇ!まだ目に残ってるよぉぉ!」 なぎさは両手をぶんぶん振りながら叫ぶ。
「……残像。」 りんは短く答える。心の奥では「確かに記憶が鮮やかに残っている」と感じていた。
丘を越えると、次の目的地へ続く道が見えた。風に舞う砂が視界を覆い、遠くには巨大な建物群が霞んでいた。まるで砂に埋もれた都市が眠っているようだった。
「ひゃーー!なんか砂漠の図書館って感じだよぉぉ!冒険だぁぁぁ!」 「……砂塵。」 りんは冷静に突っ込む。心の奥では「確かに図書都市のようだ」と思っていた。
二人は砂に足を取られながらも進み続けた。廃墟の中に立ち並ぶ塔のような建物は、かつて本で満ちていた図書館群だった。
「ねぇねぇ!本がいっぱい残ってたら最高だよぉぉ!りんの大好物だぁぁぁ!」 「……期待しない。」 りんは短く返す。だが心の奥では「もし本が残っていれば、世界の記録を知る手がかりになる」と思っていた。
こうして二人は、砂塵の図書都市へと足を踏み入れた。
砂塵の都市に足を踏み入れると、風が吹くたびに舞い上がる砂が視界を覆った。崩れかけた建物の中には、まだ本棚の影が残っている。だが本はほとんど砂に埋もれ、わずかに紙片が散らばっていた。
「わぁぁぁ!ほんとに図書館だぁぁぁ!砂のお城みたいだよぉぉ!」 なぎさは紙片を拾い上げて、舞い上がる砂と一緒にくるくる回る。
「……崩壊。」 りんは短く答える。心の奥では「それでもまだ知識の残滓が眠っている」と感じていた。
都市の中央には巨大な塔がそびえていた。塔の壁には文字が刻まれており、風に削られながらもまだ読める部分が残っている。
「ねぇねぇ!これ、図書都市のシンボルだよぉぉ!絶対中に何かあるよぉぉ!」 「……記録。」 りんは冷静に言う。心の奥では「この塔こそ希望の記録の保管場所だ」と確信していた。
二人が塔の入口に近づくと、静かな気配が漂った。砂の中から人影が現れる――長い外套をまとい、古びた本を抱えた存在。
「ひゃーー!司書さんだぁぁぁ!砂漠の守り人だぁぁぁ!」 なぎさは驚いて叫ぶ。
「……ロクス。」 りんは静かに呟いた。心の奥では「この人物こそ、知識を守り続ける者だ」と感じていた。
二人は砂塵の図書都市で、司書ロクスと出会った。
ロクスは静かに二人を見つめていた。砂塵に覆われた外套の下から覗く瞳は、長い年月を知識と共に過ごしてきた者のものだった。
「……来訪者。」 りんは短く呟いた。心の奥では「この人はずっとここで知識を守り続けてきた」と感じていた。
「わぁぁぁ!司書さんだぁぁぁ!ほんとに本を守ってるんだねぇぇ!」 なぎさは目を輝かせて叫ぶ。
ロクスは古びた本を抱えたまま、低い声で語り始めた。 「この都市は、知識を砂塵から守るために築かれた。だが人が消え、守る者は私だけになった。」
「……孤独。」 りんは静かに言った。心の奥では「自分と重なる」と強く感じていた。
「ひゃーー!ひとりでずっと守ってるなんてすごいよぉぉ!でも寂しくないのぉぉ?」 なぎさは首をかしげる。
ロクスは淡々と答えた。 「孤独は弱さではない。知識を守るために必要な強さだ。」
りんはその言葉に目を見開いた。心の奥で「自分の孤独もまた強さなのかもしれない」と思った。
「……肯定。」 りんは短く呟いた。
なぎさは笑顔でりんを見て叫んだ。 「りんの孤独は弱さじゃないんだよぉぉ!強さなんだよぉぉ!」
二人は砂塵の図書都市で、ロクスの言葉を胸に刻んだ。
ロクスは二人に古びた本を差し出した。砂にまみれたその表紙には「希望の断章」と刻まれていた。
 「この本には、世界が滅びゆく中で人々が残した言葉が記されている。だが、最後の章は空白のまま残されている。」 ロクスの声は低く、砂塵に溶けるように響いた。
「わぁぁぁ!最後の章が空白なんだぁぁ!私たちで埋めちゃえばいいんだよぉぉ!」 なぎさは目を輝かせて叫ぶ。
「……空白。使命。」 りんは静かに答える。心の奥では「この旅はその空白を埋めるためのものだ」と強く感じていた。
ロクスは二人を見つめ、ゆっくりと頷いた。 「お前たちの旅は、知識と感情を繋ぐものだ。孤独もまた強さとなり、希望を守る力になる。」
「……肯定。」 りんは短く呟いた。心の奥では「自分の孤独が弱さではなく、支えになる」と確信していた。
「わーい!りんの孤独は強さなんだよぉぉ!私が隣にいるからもっと強いんだよぉぉ!」 なぎさは笑顔でりんの肩を叩いた。
砂塵の図書都市を後にする時、塔の上から光が差し込み、二人の背中を照らした。それはまるで「次の旅へ進め」と告げる合図のようだった。

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