小説:「真宮寺教授の秘密講義」(フェブラリーS編)《デブ猫競馬》
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第三章:キレ味という名の残酷な境界線
(ふふ、佐倉くんの顔が青ざめていくわ。でも、ここからが本当の「ふるい」なの。競馬という名の確率論において、情に流されることほど愚かな行為はないわ。さて、残った精鋭たちに、さらに冷徹な現実を突きつけてあげましょうか)
真宮寺はデスクの上の資料を扇状に広げ、指先でトントンとリズムを刻んだ。
真宮寺
「佐倉くん、次の関門は『キレ』よ。ダート馬なのに芝のような末脚を求められる……この矛盾が理解できるかしら?」
佐倉
「芝のような末脚? ダートって、泥臭くパワーでねじ伏せるスポーツじゃないんですか? ラグビーのスクラムみたいな」
真宮寺
「古い、古すぎるわ。今の東京マイルはラグビーじゃない、百メートル走なのよ。良馬場のダート一六〇〇メートルで、上がりの三ハロンが三十六秒を切ったことがない馬……そんな鈍重な馬は、東京の長い直線でただの景色になるわ」
真宮寺
「エルトンバローズやシックスペンス。芝の重賞馬だからって期待されているけど、ダートでその『芝並みのキレ』を証明したことがある? 砂に脚を奪われて、自慢の脚が鈍るのがオチよ」
佐倉
「……言われてみれば、シックスペンスの前走、ダートでは全然キレてませんでした。でも、斤量(重り)はどうです? みんな五十八キロに増えるんですよね? これ、公平じゃないんですか?」
真宮寺
「公平なんて言葉、この砂の上には存在しないわ。前走で五十六キロ以下の軽い斤量を活かして勝ってきた馬にとって、いきなりプラス二キロ以上の増量は、背中にランドセルどころかピアノを背負わされるようなもの。特にハッピーマンみたいな小柄な馬には、その二キロが文字通り『トドメ』になるわ」
真宮寺
「逆にコスタノヴァを見なさい。前走で五十九キロという酷量を背負わされて耐えてきた。今回一キロ『減る』のよ。重力から解放された彼がどれほど速く動けるか、想像つくかしら?」
佐倉
「ピアノを背負った子供と、重りから解放された戦士……。勝負にならないですね。でも、コース適性についてはどうですか? オメガギネスは東京で勝ったこともありますよね?」
真宮寺
「佐倉くん、一度の成功は十回の失敗を隠せないわ。彼は東京で着外、つまり四着以下に四回も沈んでいる。勝つときは派手だけど、負けるときはあっさり。それは『東京巧者』とは呼ばないわ。ただの『気分屋』よ。GⅠという極限状態において、そのムラっ気が最悪の形で出る可能性に、あなたは自分のお小遣いを賭けられる?」
佐倉
「……う、それは怖いです。昨日のガチャで爆死したばかりの僕には、そのリスクは高すぎます」
(ガチャの爆死なんてどうでもいいけれど、オメガギネスへの疑念は正しいわ。東京のコースは彼にとって、愛人と天敵が同居しているようなもの。安定感という言葉からは最も遠い存在ね。さて、これで有力どころがまた数頭、奈落の底に落ちたわね)
佐倉
「教授、これ……今の段階で生き残っているのって、コスタノヴァ、ラムジェット、ブライアンセンスくらいじゃないですか? あんなにいたのに、たった三頭?」
真宮寺
「ええ。でも、その三頭の中にも、まだ『砂の迷宮』に閉じ込められている馬がいるわ。次は十一個目と十二個目の条件……能力の天井と、鮮度の問題ね。佐倉くん、準備はいいかしら?」
佐倉
「なんだか、最後の一人になるまで戦い続けるデスゲームみたいですね……。進みましょう、教授!」