小説:「真宮寺教授の秘密講義」(フェブラリーS編)《デブ猫競馬》
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第四章:天井知らずの怪物と、完成された王
(さあ、ここからは「ただ強い馬」を、「歴史を創る馬」へと昇華させる作業よ。22頭いた群れは、今やたった3頭の孤独な戦士へと姿を変えたわ。コスタノヴァ、ラムジェット、ブライアンセンス……。でも、GⅠという名の神殿の門を潜るには、まだ穢れが多すぎるのよ)
真宮寺は、使い慣れた万年筆を指先で回しながら、ホワイトボードに大きく3つの名前を書き込んだ。
真宮寺
「佐倉くん、デスゲームの生存者は3頭。でも、この中に『天井』を叩いてしまった馬がいるとしたら、どう思う?」
佐倉
「天井……? 能力の限界ってことですか? でも、ブライアンセンスなんて、大崩れしない安定感の塊じゃないですか。アニメの主人公の親友役みたいに、いつもいいところで助けてくれる、そんな安心感がありますよ」
真宮寺
「その『親友役』というのが彼の限界なのよ、佐倉くん。彼はダート一筋の叩き上げ。砂の王道を歩んできたわ。でもね、フェブラリーSは何度も言うように『砂の上の芝レース』。彼には、芝でも通用するような、あの痺れるようなスピードの裏付けがないの」
真宮寺
「近走の上がり順位を見ても、常に善戦止まり。つまり、彼の能力はもう『完成』してしまっていて、そこからの上積みが見込めない。21戦目以降のベテランが勝てないというデータも、結局は『鮮度』の問題なのよ」
佐倉
「……鮮度。確かに、ブライアンセンスはもう二十戦も走ってますね。それに対して、コスタノヴァとラムジェットはまだ十戦ちょっと。まだ変身を残しているフリーザ様みたいなものですか?」
真宮寺
「そう、その例えは不本意だけど正しいわね。ラムジェットなんて、ダート馬のくせに日本ダーダービーに挑んだほどのスピードの持ち主よ。芝でも通用すると陣営が確信したその『異次元の末脚』は、純粋なダート馬であるブライアンセンスには逆立ちしても出せない。ここで、彼は『最強の善戦マン』として消去リストに名を連ねることになるわ」
佐倉
「うわぁ……。ブライアンセンスまで。ついに、ついに二頭だけになっちゃった。昨年の覇者コスタノヴァと、新時代の怪物ラムジェット。これ、もう究極の二択じゃないですか!」
(コスタノヴァ、昨年ここで見せた走りは完璧だった。でも、一年経った今、彼はまだあの輝きを保っているのかしら? 一方でラムジェット、君のその粗削りなパワーは、東京の長い直線で正しく解放されるの? どちらも完璧に見えるけれど、完璧なものほど、壊れた時の衝撃は大きいのよ)
佐倉
「教授。この二頭なら、どっちが勝ってもおかしくないですよね? 斤量も適性も文句なし。あとはもう、好みの問題……とか言わないですよね?」
真宮寺
「好みで馬券が当たれば、競馬場は今頃ピンク色の綿菓子で溢れているわ。まだトドメの条件が三つ残っているの。ローテーション、キレの質、そしてダートキャリア。この二頭がその関門をどう潜り抜けるか、それとも共倒れするのか……」
佐倉
「……共倒れ。そんなの、悲しすぎますよ! 最近のバッドエンド映画の流行りに乗らなくていいですから! 教授、早くそのトドメの分析を聞かせてください!」
真宮寺は、窓の外の夕闇を見つめ、少しだけ声を低くした。
真宮寺
「いいわ。でも、覚悟はできているかしら? 二頭が生き残ったとしても、そこにはまだ『一枠』という、逃れられない運命のルーレットが待っているのだから」