小説:「真宮寺教授の秘密講義」(フェブラリーS編)《デブ猫競馬》
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第五章:運命の二重奏と、沈黙の残照
(コスタノヴァとラムジェット。一方は完成された芸術品、もう一方は未完の破壊神。この二頭が最後に残ったのは、単なる統計の悪戯かしら。それとも、競馬の神様が仕組んだ最高に性格の悪い皮肉? どちらにせよ、最後の一滴まで絞り出さないと気が済まないわ)
真宮寺は、ホワイトボードに書き込んだ二頭の名前を、鋭い視線で射抜いた。
真宮寺
「佐倉くん、いよいよ最終試験よ。まずはローテーション。コスタノヴァは十一月の武蔵野Sから、ラムジェットは十二月のチャンピオンズCから。どちらも中十週以上の『ゆとり教育』ね。強行軍の馬たちが息切れする中で、彼らは最高のリフレッシュ状態で出てくる。まさに、期末テスト前にしっかり寝てきた優等生よ」
佐倉
「ゆとり教育! 確かに、中二週の強行軍で出てくる馬たちとは、余裕が違いますね。でも教授、さっき言ってた『キレの質』については? どっちも上がりの脚は一等賞でしょう?」
真宮寺
「ええ、データ上はね。コスタノヴァは去年の勝ち馬であり、前走も上がり一位。ラムジェットも常に上位。どちらも『キレ不足』で消す理由は一ミリも存在しないわ。そして十五番目の条件、ダートキャリア。初ダートでオロオロする芝馬たちとは違い、この二頭は砂の味を熟知している。……そう、論理はここで、非情にも『どちらも消せない』という結論を弾き出したわ」
佐倉
「ええええ! ついに、ついに対決ですか! 教授、ここからどうやって決着をつけるんです? まさか『どっちも本命』なんて、そんな日和ったこと言いませんよね? 最近のスマホゲームのダブルピックアップガチャみたいに、どっちが出ても当たりです、みたいな!」
真宮寺
「日和った? 私を誰だと思っているの? 最後の最後、論理のトドメを刺すのは『枠順』よ。過去十年の鉄則……一枠を引いた瞬間に、どんな名馬もただの置物と化す。もしコスタノヴァかラムジェット、どちらかが一番か二番を引いたら、その瞬間に私の評価は『消し』か『大幅下げ』に転じるわ。逆に、真ん中より外の好枠を引いた方が、今回の『真の覇者』よ」
佐倉
「……究極のクジ引きですね。でも教授、もし二人ともいい枠に入っちゃったら? それこそ、どっちを上に取るか、死ぬほど迷いませんか?」
(迷う……? 私が? 笑わせるわ。迷うのはデータが足りないから。でも、この二頭の間には、目に見えない『期待値』の断層が走っているのよ。一方はルメールが乗って過剰に買われる既得権益の象徴。もう一方は、悲願のGⅠを狙う三浦皇成を背にした、不遇の怪物……)
真宮寺
「佐倉くん。一つ面白いことを教えてあげる。世の中の人間は、昨年の覇者であるコスタノヴァに安心感を求めるわ。でも、馬券としての旨味、つまり『期待値』という観点で見れば、評価が割れやすいラムジェットの方が、単勝十倍以上も付く『お宝』になる可能性が高い。合理的な投資家なら、どちらに重きを置くべきかは自明よね?」
佐倉
「期待値……。確かにお金は大事ですけど、三浦騎手のGⅠ初制覇っていう、ジャンプ的な熱い展開も捨てがたいです!」
真宮寺
「熱い展開なんて、冷めたピザより価値がないわ。でも……いいわ、次の章で、もしこの完璧な二頭が揃って飛んでしまった時の『最悪のシナリオ』を、あなたの汚いノートに書き込んであげましょう。砂の上の絶対なんて、存在しないのだから」
佐倉
「最悪のシナリオ……教授がそんな弱気なことを言うなんて珍しいですね。進みましょう!」