小説:「真宮寺教授の秘密講義」(フェブラリーS編)《デブ猫競馬》


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第六章:不確実性のカオスと、砂に消える王たち

(論理の城壁を築き上げ、二頭の騎士を選び出した。けれど、心のどこかで警鐘が鳴り止ない。競馬場という場所は、論理が最も鮮やかに裏切られる劇場でもある。もし、この二頭が揃って馬券圏外に消えるような事態が起きたら? その時、砂の上で笑っているのは誰かしら)
真宮寺は、持っていた万年筆を置き、腕を組んで深く椅子にもたれかかった。
真宮寺 「佐倉くん、今私たちは最高の二頭を選んだ。でもね、物事には常に『例外』という名の悪魔が潜んでいるのよ。例えば、当日の馬場が凍結防止剤でガチガチに固まっていたら? あるいは、誰も競り合わない超スローペースになったら? そうなった時、後方から自慢の末脚を爆発させようと構えているラムジェットやコスタノヴァは、物理的に届かない位置で虚しく脚を余すことになるわ」
佐倉 「ええっ! 二頭とも飛んじゃうんですか? そんな、アニメの最終回で主人公とライバルが相打ちになって、全然関係ないモブキャラが世界を救っちゃうみたいな展開……」
真宮寺 「まさにそれよ。ラムジェットが飛ぶ展開……それは『差し・追い込みが死ぬ』展開。その時、掲示板を独占しているのは、私たちがゴミ箱に放り込んだはずの『先行馬たち』よ。論理的に言えば、条件⑤や条件⑨で脱落した彼らが、展開という名のドーピングで蘇るの」
佐倉 「ゾンビだ……。ゾンビたちが砂の中から這い上がってくる……。教授、もしそうなった時、一体誰が残るって言うんですか?」
真宮寺 「……皮肉なものね。例えば、中距離先行で消した『ダブルハートボンド』。彼女がハナを奪って誰も競りかけなければ、そのままスタミナで粘り切ってしまう。あるいは、東京でのムラっ気を嫌った『オメガギネス』。彼が内枠からロスなく立ち回って、直線で早めに抜け出したら、後方の二頭はもう追いつけない」
佐倉 「ダブルハートボンドにオメガギネス……。どっちも有力馬として名前が挙がってた馬たちじゃないですか。結局、彼らが来るんですか?」
真宮寺 「あくまで『ラムが飛ぶなら』という仮定の話よ。他にもロードクロンヌの持続力、ウェイワードアクトの死んだふり逃げ、さらにはウィルソンテソーロの老獪な格の違い……。これらがセットで押し寄せてきたとき、私たちの論理は『展開の暴力』の前に屈服するわ」
佐倉 「うわぁ……。なんだか、話が複雑になってきました。結局、何を信じればいいんですか?」
(信じる? そんな宗教的な概念、私に求めないで。私はただ、可能性を数値化しているだけ。でも、佐倉くんのその不安そうな顔を見ていると、少しだけ『遊び心』を教えたくなるわね)
真宮寺 「佐倉くん、次の章では、この『ラムが飛ぶシナリオ』を逆手に取った、最高に性格の悪い買い方を考察してみましょうか。論理を疑い、疑念を抱きつつも、その疑念すら馬券に昇華させる……それが真のギャンブラーの姿よ」
佐倉 「性格の悪い買い方……教授、最近の悪役令嬢モノのアニメに影響されてませんか? でも、気になります! 進みましょう!」