真宮寺教授の秘密講義《デブ猫競馬》


トップ】 【パカパカ競馬予想】 【日程表】 【WIN5予想】 【動画で見る短編小説

第3章:ベテランの哀愁と、無慈悲な二次スクリーニング

(13頭……。まだ多い。投資において選択肢の多さは、すなわちリスクの増大を意味する。確率の海で溺れないためには、冷酷なまでに理詰めでもう一段階、網の目を細かくする必要があるのだ)

神宮寺はホワイトボードの前に立ち、残った13頭のリストをじっと見つめていた。その手には、先ほどまで飲んでいた空のコーヒーカップが握られている。

佐倉:「教授、カップ空ですよ。おかわり淹れましょうか? ……それにしても、一気に4頭削ったとはいえ、まだ13頭もいますね。ここからどうやって絞り込むんですか?」

若葉:「せやせや! ここからはどうするん? アニメやったら、新技覚えたヤツが生き残るパターンやんな! 異世界転生モノでも、大体この辺でチートスキル発動するで!」

神宮寺:「若葉、競馬界に異世界からの転生者はいないし、チートスキルも存在しない。あるのは残酷なまでの『加齢』と『現状の実力』だけだ。……佐倉くん、コーヒーはブラックで頼む」

神宮寺はカップを佐倉に渡し、ホワイトボードに新しい条件を書き込み始めた。

神宮寺:「二次スクリーニング、一つ目の消し条件だ。【7歳以上のベテラン馬で、直近4回のレースで2位以内に入っていない馬】。これを容赦なくリストから消す」

若葉:「ええーっ! 7歳以上って、人間で言うたらおっちゃんやん! ウチ、バトルアニメで出てくる歴戦の渋いおっちゃんキャラめっちゃ好きやねんけど! 普段は飄々としてるけど、本気出したら最強、みたいな!」

佐倉:「若葉さん、馬の7歳は人間だと40代半ばから50代くらいですね。今回走る中山1800mは、急な坂と4つのコーナーを回る、一瞬の『機動力』と『スピード』が問われる舞台なんです。おっちゃんには少し酷なんですよ」

(加齢による衰えはデータとして如実に現れる。特に開幕したばかりの綺麗な芝生では、若い馬たちのスピードの変化にベテランの肉体がついていけない。過去の栄光だけで今のスピード勝負を制することは、論理的に不可能に近い)

神宮寺:「例外として買えるのは、最近のハイレベルなレースでも勝ち負けできているバケモノだけだ。佐倉くん、衰えたベテランたちは誰だ?」

佐倉:「該当するのは『エヒト』『オニャンコポン』『サイルーン』『サンストックトン』『ショウナンマグマ』の5頭です。彼らは直近、重賞で連対実績がありませんので脱落となります」

若葉:「オニャンコポン、名前可愛いのにアカンのか! ……ん? ちょっと待って、佐倉助手。リストの『セイウンハーデス』も7歳やで? この子は消さへんの?」

神宮寺:「いい着眼点だ、若葉。だがセイウンハーデスは残す。彼は3走前に重賞で1着になっている。まだトップレベルで戦える証拠がある。これが『バケモノ』の条件だ」

若葉:「なるほどなー! 現役バリバリのおっちゃんは合格やな! 他の5頭はバツや!」

神宮寺:「次は二つ目。【直近4回のレースで、一度も『3着以内』に入っていない馬】だ。投資において最も重視すべきは過去の栄光ではなく『今の充実度』なんだよ」

(世界大会レベルの馬たちが集まるこの舞台で、1年間も馬券圏外に沈んでいる馬が急浮上する確率はデータ上ほぼゼロだ。ノイズでしかない)

佐倉:「該当馬は『シャンパンカラー』と『マイネルモーント』です。元GⅠ馬であっても、今の勢いがないため消しとなります」

若葉:「元世界チャンピオンでもアカンのか……シビアやな! バツや!」

神宮寺:「最後、三つ目。【直近3回のレースすべてで『8着以下』に完敗している馬】。馬も生き物だ。『走っても勝てない』と理解してしまえば、本気で走るのをやめてしまう」

佐倉:「『マジックサンズ』ですね。直近は二桁着順など完敗続きです。かつての実績はあっても、現状のデータから復活を信じるのは論理的ではありません」

若葉:「マジックサンズ、名前カッコええのに! でもデータがアカンのならしゃーない! バツや!」

神宮寺:「よくやった、若葉。これで17頭いた登録馬は、ついにたったの『5頭』にまで絞り込まれた。検討テーブルに残った精鋭は、エコロヴァルツ、カラマティアノス、セイウンハーデス、チェルヴィニア、レーベンスティールだ」

若葉:「おおおお! 5頭! アニメのメインパーティーみたいな人数や! めっちゃスッキリしたわ!」

神宮寺:「ここからがプロの分析だ。この5頭をさらに丸裸にし、明確なランキングを付けていくぞ」