朝靄が森を包み、光の粒子がまだ淡く漂っていた。なぎさは「おはよーー!」と元気いっぱいに飛び起き、りんは静かに荷物をまとめる。
歩き始めると、風に混じって「さらさら……」という水の音が聞こえてきた。
「ねぇねぇ!聞こえるよね!?川かな?滝かな?それともーー湖だぁぁぁ!」 「……水。」 りんは短く答える。だが心の中では「湖かもしれない」と期待が膨らんでいた。
木々の間から差し込む光の中に、あり得ない光景が広がっていた。空の高みに、湖が浮かんでいる。水面が空に張り付いたように輝き、雲と混ざり合っていた。
「ひゃーーー!ほんとに浮いてる!空に湖がぷかぷかしてるーー!」 なぎさは両手を振り回し、跳ねるように喜ぶ。
「……ありえない。」 りんは呟く。だが胸の奥では「美しい」と強く感じていた。
二人は湖へ近づこうと探し回り、峡谷の裂け目から吹き上がる強い上昇風を見つけた。
「これだよ!これに乗れば、ひゅーーーって飛んでいける!」 なぎさは勢いよく風に足を踏み入れた瞬間、スカートがばさぁっと舞い上がり、慌てて押さえた。
「きゃーーー!ちょっと!風強すぎーー!」 「……無様。」 りんは冷静に見ているが、心の中では「少し面白い」と笑いを堪えていた。
二人は必死に体勢を整え、互いに手を取り合って風に乗る準備をした。
「せーのっ!」 なぎさの掛け声で二人は風に身を任せた。瞬間、体がふわりと浮き上がり、森が遠ざかっていく。
霧と光の粒子が舞い、二人の周囲を星屑のように輝かせる。上昇するにつれ、空に浮かぶ湖が近づいてきた。水面は鏡のように光を反射し、雲と溶け合いながら揺れている。
「うわぁぁぁぁぁ!夢みたいーー!」 「……幻想。」 りんは短く言う。だが心の奥では「こんな景色を見られるなんて」と震えるほどの感動を覚えていた。
湖の縁に辿り着くと、そこには古びた焚き火跡と簡素なテントの残骸があった。誰かがここで過ごした痕跡が残っている。
「えっ!?誰か来たことあるんだーー!すごいすごい!」 「……旅人。」 りんは呟く。心の中では「私たちだけじゃない」と安堵を覚えていた。
二人は湖のほとりに立ち、過去の旅人の影を感じながら、次の探索へ胸を高鳴らせた。
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