◀「聖裸の魔女と等価交換の迷宮攻略記」
▶第3章「聖裸の魔女と、見えざる学者と鉄壁の寄生虫」
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第02章「聖裸の魔女と、消えない経費と見えない衣服」
「VOICEVOX: 四国めたん」「VOICEVOX: 雨晴はう」「VOICEVOX: 剣崎雌雄」「VOICEVOX: ずんだもん」「VOICEVOX: もち子さん」「VOICEVOX: 白上虎太郎」「VOICEVOX: 春日部つむぎ」「VOICEVOX: 玄野武宏」「VOICEVOX: 青山龍星」
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早朝の刺すような冷え込みが、
 あまりに心許ない薄布をすり抜けて、 剥き出しの肌をじりじりと撫でていく。
かつて確かに私の身体を守っていた美しい絹の衣たちは虚無へと消え去り、 いまや私は、
 あまりに無防備な秋霜(しゅうそう)の中に立たされていた。
――王立魔法大学、 第三研究棟の最奥。 世俗の喧騒から隔絶されたその聖域の、 重厚な木扉を押し開ける。

刹那、 淹れたてのブラックコーヒーの苦みばしった芳香と、
 幾星霜もの時を重ねた古い羊皮紙の匂いが混ざり合い、 鼻腔を深くくすぐった。
ルイズ:「失礼します、 教授。 迷宮第一層の観測データを持ち帰りました」
胸元を不自然に隠しながら、
 報告書を差し出す。
執務机の奥で、 白衣姿の指導教授は、 昨日の朝刊と羊皮紙の束を交互に睨みつけていた。 深い隈(くま)の落ちた目元をピクピクと引きつらせ、 手元の小さな瓶から胃薬の錠剤を取り出すと、
 水すら飲まずにそのまま噛み砕く。
ガリ、
 という乾いた破壊音が、 奇妙な静寂の落ちた研究室にやけに響いた。
教授:「……何故、 Tシャツ一枚なのだ?」
呻くような声だった。
無理もない。 現在の私のいでたちは、
 膝上まで辛うじて届く『超大きめの無地Tシャツ(男物)』ただ一枚。 その下に纏うものは、
 何一つとして存在しない。
まるで恋人の部屋で無防備な朝を迎えたかのような淫らな格好だが、 事態はもっと深刻で、 かつ冷酷なまでに物理的だった。
トト:「もう、 今月の衣装が全滅したんや」
私の足元から這い上がってきたトトが、 事も無げに冷酷な現実を突きつける。
ルイズ:「大丈夫です! 帰りにギルドへ寄って討伐報酬を計上する計算ですから、 すぐに新しい実証用の触媒(服)を調達できます!」
教授:「そういう問題ではない……」
トト:「ないな」
トトは教授の意見に深く同意するように、 私の机の上で我が物顔に頷いた。

教授はさらに深いため息を吐き、 机上の書類を忌々しげに指先で弾いた。
教授:「君が入学してこの一ヶ月、 君のオカルトじみた理論実証のせいで研究室の窓ガラスが三度吹き飛び、
 私の夏のボーナスはすべて弁償費用として消滅した。 だが、 今回のは規格外すぎる。 国家レベルの災害だぞ」
ルイズ:「過大評価です。 私が等価交換の果てに討伐したのは、 たかが新米用の粘性体(スライム)ですから」
教授:「これを見ろ」
差し出されたのは、
 王都騎士団の朱印が押された緊急報告書。 そこには、 迷宮下層から逃亡し、 騎士団が総出で追跡していた凶悪な『古代種』の魔力反応が、 第一層の岩壁ごと完全に消滅した旨が記されていた。
教授:「君の放った魔法の『余波』で、 歴史的な災厄が細胞一つ残さず消し飛んでいる」
背筋が凍るような戦慄の事実。 しかし、 私の脳内に恐怖などという非合理な感情は湧かなかった。 ただ、 極めて純粋な学術的達成感だけが、
 胸を満たしていく。
ルイズ:「ああ、 なるほど。 余波ではありませんよ、 教授」
教授:「……何?」
ルイズ:「最高級シルクの下着が持つ魔力伝導率を百パーセント凝縮するために、 第一層の空間曲率と魔導波形の干渉を、 私は瞬時に脳内で再計算したのです。 その際、 一番邪魔だったあの高密度の魔力反応(古代種)に、 余剰次元の座標を力技で押し付けただけに過ぎません」
大真面目に答えると、 教授は再び絶望に満ちた手つきで、 胃薬の瓶へと手を伸ばした。
教授:「……神の領域の数式を、 ゴミ箱に粗大ゴミを捨てるような感覚で使うんじゃない。 これ一本を論文にすれば、 魔導の歴史が根底からひっくり返る大発見だぞ」
ルイズ:「歴史より、 明日のパンです。 それより教授、 多次元座標の暗算にリソースを割いたので、
 猛烈にお腹が空きました」
私は机に両手をつき、 純文学のヒロインのように儚く切実な瞳で、
 恩師を見つめ返した。
ルイズ:「消失した実証用下着代(一万二千クローネ)は、 大学の『研究経費』として計上できますか?」
トト:「落ちるかいな」
教授:「社会を揺るがす前に、 まず君の破綻した金銭感覚をどうにかしてくれ……」
圧倒的な魔導の真理と、 あまりに矮小な経済的葛藤。

知性を極めたはずの私のキャンパスライフは、 今日も彼氏シャツ一枚という風紀違反スレスレの羞恥の中で、
 あまりに不本意な幕を開けるのだった。
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朝の喧騒に包まれた大学の中庭。 燦々と降り注ぐ日差しの中、
 私はギルドへ向かうべく白磁の生足を晒して石畳を歩いていた。
すれ違う学生たちが一様に目を見開き、 そして罪悪感に苛まれたように気まずく視線を逸らしていく。 無理もない。 私の現在のいでたちは、 微風が吹くたびに絶対的な防衛ラインを曝け出す、
 超大きめの無地Tシャツ一枚なのだから。
教授:「ルイズくん……せめて私の白衣を貸そうか……?」
同行している教授が、
 胃の辺りを悲痛そうに押さえながら力なく提案してきた。 第一層消滅という国家規模の事後処理に向け、 ギルドへ提出する共同書類の手続きのため、 わざわざ付き添ってくれているのだ。
ルイズ:「お気遣いなく、 教授。 他人の魔力が微量でも染み付いた布地では、
 万が一の緊迫時に次元の出力係数が安定しませんから」
トト:「いざという時ってなんやねん。 お前、 キャンパス内でさらに脱ぐ気か」
私の足元を歩くトトが、 呆れたように鼻を鳴らす。
教授:「それだけは本当に困ります……」
教授は今にも泣き出しそうな目でこちらを見つめている。
ルイズ:「しかし教授、 もしこのTシャツを触媒として消滅させた場合、 この安価な綿素材の対価で発動できる次元魔法など――どう計算しても『ポンッ』と微弱な音が鳴るレベルですよ。 威力が無さすぎて、 いざ魔物と遭遇した際に身が守れるか心配になってきました」
トト:「心配するのそこかいな! 乙女の風紀の話をしとるんや!」
教授が「もう駄目だこの天才」という絶望の表情で天を仰いだ。
そんな不毛なやり取りを繰り広げていると、 突然、
 薔薇の茂みの陰から黒い影が躍り出てきた。
ポエム記者:「聖裸の魔女様! 学内報『真実の探求者』の特派員です!」
現れたのは、
 無精髭を蓄え、 その瞳に異様なまでの狂信の熱を宿したタブロイド紙の熱血ポエム記者だった。 その手には、
 まるで武器のように羽根ペンと分厚い手帳が握りしめられている。
ポエム記者:「ルイズ氏、 取材良いですか! 良いですよね!! ええ……わかります。 その沈黙は肯定の証! 全て私に任せてください!」
記者はフンスと熱い鼻息を荒くし、 私との距離を物理的かつ不躾にグッと詰めてくる。
ルイズ:「――取材って、 取材費(クローネ)は発生するのですか?」
教授:「ルイズくん、 まさか取材を受ける気なのか!? 今は一刻も早くギルドに向かわないと、 君は一生その破廉恥な布切れ一枚のままだぞ……!」
教授が私の華奢な肩をガシッと掴み、
 涙目で必死に制止してくる。
トト:「あかん、 この天才、 またお金に目がくらんどるわ」
私の足元で、 トトが肉球でパシッと己の額を叩いた。

ポエム記者:「お金など一クローネも出ません! どうぞご安心してください!! これは私の魂が突き動かした極秘取材ですので、 すべて独断のボランティアで行っております!」
記者はむしろ誇らしげに、 ビシッと親指を立てて無駄に引き締まった胸を張った。
ポエム記者:「我が学内報の独自調査によれば、
 あなたの研究室の最奥には、 【絶対に使用厳禁】と血文字の如き文字で記された『黒箱』が鎮座しているとか! ずばり、 あれこそが第一層で古代種を滅ぼした、 禁忌の最終兵器ですね!?」
記者の放った言葉に、 私は思わず息を呑んだ。
あの、 呪われし黒箱。
脳裏に鮮烈に蘇るのは、 王都の最前線にいる、 頭のネジが完全に消し飛んだ実の兄から送られてきた禍々しい小包の記憶だ。
兄:『愛おしい我が妹へ。 これからの過酷な魔導の道に備え、 最強の特注防具――国家のレジェンド級遺物(アーティファクト)たる「パンツ」を贈る』
という戦慄の手紙と共に届いたそれは、 迷宮の最下層で発掘された未知の魔導繊維らしい。 が、 着用した瞬間に私の誇りと尊厳が社会的死を迎える、 悍(おぞ)ましい精神的呪物――パステルピンクのフリル付きくまちゃんパンツだった。
これを私に装備させようと目論む、 王国最強の聖騎士長(重度シスコン)の笑顔を思い出すだけでも、 全身の毛穴が逆立つ。

これだけは、 天地が引っくり返っても誰にも言えない。 もし等価交換の触媒としてあれを身に纏い、 多次元魔法の対価として戦場で『くまちゃん』が消滅するようなことがあれば、 私はその場で世界を巻き込んで自爆するだろう。
ルイズ:「……それは、 私の口からは言えません」
私は痛ましげに顔を伏せ、
 重々しく首を横に振った。
ポエム記者:「おおっ! やはり口にすることすら憚られる、 国家機密クラスの最終兵器なのですね!」
ルイズ:「違います。 あれは……我が身のすべてを捧げてでも、 決して触れてはならない因果の呪物です。 できることなら、 生涯一度たりとも使いたくはありません」
物理的にも、 そして何より、 社会的な意味においても。
純文学の悲劇のヒロインのように、 憂いを帯びた声色で真実(くまちゃんパンツへの恐怖)を告げると、 ポエム記者の顔がパァァッと狂喜に輝いた。
トト:「ほんま、 あの黒箱なんなん? ワイも中身めちゃくちゃ気になるわ」
私の足元でトトが暢気に呟く。
ポエム記者:「自らの身(衣服)を極限まで削り、 世界を救う聖女に、 そこまで言わせるほどの禁忌……! 分かりました! あれは、 世界を容易く崩壊させる終末の兵器なのですね!?」
教授:「絶対ちがうとおもうぞ!!」
すかさず教授が、 胃を抱えたまま血を吐くような絶叫をあげる。
トト:「せやな。 世界やなくて、 本人の尊厳を跡形もなく消滅させる自爆兵器やな……たぶん」
トトが短い前肢で不格好に腹を掻きながら、 極めて正確な補足をした。
だが、 記者の脳内フィルターには、 すでに私たちの正論など一文字も届いていなかった。
ポエム記者:「『聖裸の魔女、 封印されし禁忌の箱を抱き、 世界を憂う』……最高の叙事詩(ポエム)になります! 神聖なる取材協力をありがとうございました!」

記者は一人で感極まり、 嵐のように猛スピードで去っていった。
ルイズ:「……また一つ、 私の清廉なる名誉が謂れのない方向へと歪められてしまいました」
トト:「自分、 自業自得っていう美しい言葉を知っとるか?」
ルイズ:「それより教授。 あの方、 私のこの洗練されたミニマリズム溢れるTシャツ姿について、 一切言及しませんでしたね」
教授:「すでに君という存在自体が、 周囲のまともな常識を完膚なきまでに麻痺させている証拠だ……」
深いため息をつく恩師を尻目に、 私は討伐報酬という名の新たな弾薬(最高級シルクの下着)を求め、 いよいよ冒険者ギルドへの歩みを早めたのだった。
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冒険者ギルドの重厚な扉を押し開けると、
 朝の活気に満ちた喧騒が、 熱波のように私たちの全身に押し寄せてきた。
染み付いた汗と錆びた鉄、 そして安酒の入り混じった独特の匂い。 依頼ボードの前に群がる屈強な探索者たちの怒号が四方に響く。
しかし、 私が一歩足を踏み入れた瞬間、 その喧騒は上位魔法の如くピタリと止んだ。 ギルド内のすべての視線が、
 私の姿――膝上までしか届かない、 超大きめの無地Tシャツ一枚――に釘付けになる。
次の瞬間、 彼らは一斉にバッと目を逸らし、 罪悪感に苛まれたように気まずく床の木目を数え始めた。 静まり返った室内で、 私の裸足が床を踏むペタ、 ペタという湿った音だけが、 無駄に凛として響き渡る。
教授:「……見事に全員、 視線を逸らしましたね」
同行している教授が胃を押さえながら、 いつの間にか自分の肩に飛び乗っていたトトにそっと囁いた。
トト:「そらそうやろ。 朝っぱらからダボシャツ一枚のノーパン娘がウロつかれたら、 野生の冒険者でも目のやり場に困るに決まっとる。 ましてやここ、 公共の場やぞ」
トトは教授の肩の上で、 哀れな大人を見る目で深いため息を吐いた。
ルイズ:「そんなに私を不審者扱いしないでください。 これは純然たる布地不足という物理的危機の顕現であり、 資金難の極致がもたらした不可抗力です。 羞恥心なら、 確率論的計算において私が一番感じています」
トト:「ほんまかいな。 脳のネジが全損しとるようにしか見えんぞ」
ルイズ:「堂々としていれば、 精神の周波数が周囲の人間と同化して浮きません! 案外大丈夫なはずです」
私は両腕で胸元をガッチリと十字にホールドしたまま、
 無駄に威風堂々と胸を張り、 できるだけTシャツの裾がめくり上がらないよう精緻な摺り足で受付カウンターへと向かった。
窓口に立つ制服姿の受付嬢は、 私の姿を認めるなり、 天啓を得た神官のような笑顔でパァァッと顔を輝かせた。
受付嬢:「お待ちしておりました、 ルイズ様! ギルドマスターの特例権限により、 あなたの偉業を称え、 二つ名が正式登録されました!」
受付嬢が恭しく差し出してきた、 上質な羊皮紙。 そこには、 美しいカリグラフィーの飾り文字でこう刻まれていた。

【ルイズ・《聖裸の魔女》】
ルイズ:「……却下します。 即刻、 時空の彼方へ取り下げてください」
私はバンッ!と受付カウンターに身を乗り出し、 悲鳴のような声を上げた。
受付嬢:「ええっ? しかし、 これは冒険者にとって最高の名誉ですよ……。 公式の二つ名授与は、 貴族の爵位に匹敵する価値がある称号なのです!」
受付嬢は純粋な善意から、 心底不思議そうに小首を傾げた。
ルイズ:「そんな不名誉な称号は一クローネの価値もありません! というか文字面からして悪意しか感じられません! これでは最高の名誉ではなく、 ただの公然わいせつ犯に対する、 いささか雅(みやび)すぎる別称です!」
私が肩を震わせて抗議すると、 受付嬢は困ったように羊皮紙の隅を細い指で指差した。
受付嬢:「ですがルイズ様、 これはギルド本部の最高幹部による直筆の推薦状でもあるのです。 その羊皮紙の左下にある、 最高責任者のサインをご覧ください」
羊皮紙の左下に目を落とすと、 そこには王都にその名を轟かせる七賢人が一人――《星詠みの賢者》の直筆署名と、
 意味不明なほど神聖な魔力刻印がこれ見よがしに刻まれていた。
ルイズ:「誰ですか、 この暇人は……。 私の知り合いに天体観測が趣味の不審者などいませんが」
受付嬢:「えっ……」
受付カウンターの女性は、 国家最高権力者を一蹴した私の言葉に完全に凝固した。
トト:「響きもええし、 これでいこ。 聖なる裸の魔女や。 自分、 これでめでたく歴史に醜名が残ったな」
ルイズ:「トト! 貴方は一生黙っていなさい!」
私が使い魔を睨みつけていると、 背後からガシャン、 ガシャンと重々しい金属音が近づいてきた。
振り返ると、 昨夜の迷宮で私を聖女と誤認した、 あの巨躯の真面目な騎士パーティリーダーが立っていた。
騎士リーダー:「やあ、 若き無垢なる英雄。 こんな朝早くから次なる聖戦(ギルド)に赴いているとは、 頭が下がる思いだ」
ルイズ:「あ、 貴方は昨日の、 話の通じない……」
騎士リーダー:「謙遜は美徳だが、 君の気高き偉業は既に王都全土の騎士団にも届いている。 君の尊い自己犠牲(全裸)によって救われた命は数知れないのだ」
リーダーは分厚い鋼鉄の胸当てに厳かに手を当て、 深い崇拝の念を込めて頭を下げる。
ルイズ:「その話は迷宮の奥底でもさんざん説明したでしょう! 私が相手にしたのはただの布喰らい(スライム)です! 古代種などという物騒な知的生命体は影も形も知りませんし、 勝手に私の魔法の余波に巻き込まれて時空の彼方へ消え失せたのなら、 それは純然たる確率論的事故です! あんな危険な座標に滞在していた古代種の方が全面的に悪いのです!!」
トト:「あかん……この天才、 ガチの業務報告しとるのに、 話がミリ単位も噛みおうとらんわ……」
トトが教授の肩の上で遠い目をする。
騎士リーダー:「なんという奥ゆかしさ……。 己の功績を誇るどころか、 すべては天災の如き事故だったと言い張るのか……!」
騎士リーダーは私の大真面目な正論を、 完全に聖書の逸話か何かに脳内翻訳したらしい。 鉄仮面の奥の瞳から、
 再び大粒の熱い涙がボロボロとこぼれ落ちた。
騎士リーダー:「己の神話級の偉業を、 あえて『コスト効率』などという俗物的な言葉で偽悪的に語る、 君のその清らかな精神を、 我々は生涯忘れまい!」
ルイズ:(……泣きたいのは私の方なのに……。 この狂信的な対話を強制終了させるための計算式は……出てこない……嘘でしょう、 私の頭脳がバグっているのですか……!?)
ルイズ:「ああああっ……! 私は本当に、 消失した一万二千クローネの下着代に絶望して一晩中枕を濡らしていたのですッ!」
騎士リーダー:「あぁ、 痛いほどに分かるぞ。 強大すぎる真理の力を独り持つ者の、 深き孤独と苦悩……! 案ずるな、
 これからは我々が君の堅牢なる盾となろう!」
トト:「不条理の永久機関(ループ)やな」
ルイズ:「人の話を一文字でもいいから、 まともな聴覚で聞いてください!!」
私の悲痛な叫びは、 またしても彼らの強固すぎる信仰の壁に、 無慈悲に弾き返される。
トト:「せやな。 盾が欲しいんは事実や。 自分のむき出しの肌を隠す、 服代わりにな」
トトの、 的外れでいて極めて現実的なツッコミだけが、 私の足元で虚しく響いていた。
報酬を受け取るという極めて経済的な目的だったはずのギルド訪問は、 私の社会的尊厳に、 もはや時間遡行魔術でも修復不可能な傷跡を残しただけだった。
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トト:「あのリーダー、 筋肉全振りやからな。 まぁええやん。 ギルドで公式に登録されたんや、 聖なる裸で《聖裸》。 響きだけはええで。 聖星とか清星とか、 あるいは『聖羅』も同音文字やし、 字面次第でいくらでも誤魔化せるって」
足元でトトが、 どこから取り出したのか(おそらく私の数少ない下着代の残金から横領した)スルメをクチャクチャと下俗に齧りながらのたまう。
ルイズ:「よくありません! これでは私が本当に、 好き好んで薄着を貪っている重度の変態みたいではないですか!」
私の悲痛な叫びに、 同行していた教授が同情に満ちた表情で深く頷いた。
教授:「ルイズくん、 君の切実な訴えは、 同じ合理主義的な魔導を志す者として痛いほど理解しているつもりだ。 だからこそ、 私なりに教授としての対策を用意した」
言うが早いか、 教授は執務机の下から鈍く光る重厚な銀色のトランクを取り出し、 仰々しい手つきで気密ロックを外した。
プシュー、 と精密魔導機械めいた高圧の排気音が響き、 ゆっくりとトランクの蓋が開かれる。

そこに入っていたのは、 朝の陽光を厳かに反射して神々しく輝く、
 真新しい純白のワンピースと一足の靴下だった。
ルイズ:「これは……?」
教授:「我が第三研究室の次期予算を強引に前借りして開発した、 『対次元魔導ドレス(プロトタイプ)』だ。 君の次元魔法が発動する際の等価交換(パージ)の余波を受けても、 布地の質量を完全に維持する特殊な保護術式を編み込んでおいた」
ルイズ:「本当ですか、 教授……!」
私は胸元を隠す十字の腕組みに思わず力が入り、 その瞳を純粋な希望に輝かせた。
ついに、 ついにあの理不尽な全裸化の恐怖から解放される、 完璧な数学的回答(ドレス)が目の前にあるのだ。
ルイズ:「完璧です、 教授。 これで衣服と尊厳を失わずに次元魔法が撃てる。 理不尽極まりない等価交換の恐怖から、 ついに解放されるのですね!」
私は歓喜に華奢な肢体を打ち震えさせながら、 純白のドレスと靴下を愛おしげに抱えて別室へと駆け込んだ。

トト:「ワンピはわかるけど、 なんで靴下までセットなんや」
トトが丸い首を傾げる声が、 扉の向こうから聞こえる。
別室の扉の外で、 教授が厳かに解説を紡いだ。
教授:「その靴下の部分でドレス全体の保護術式をコントロールする演算プログラムが組まれている。 因果の偏りを足元で相殺するのだ。 だから、 必ずセットで使用しなさい」
ルイズ:「ああ……なるほど! ワンピース自体が傷ついても術式が破損しないよう、 末端の足元で出力を制御しているのですね。 さすが教授、 天才の所業です!」
勝手に納得した私は、 忌まわしい男物の大柄Tシャツを脱ぎ捨て、 真新しいワンピースに袖を通した。
地肌に違和感なく馴染む、 滑らかなシルクの官能的な質感が広がる。 スカートの丈も動きを一切阻害しない完璧な仕立て。 魔力伝導率も極めて高い。
着替えを終えて部屋に戻ると、 教授は我が子の成長を見守るかのように満足げに頷いた。
ルイズ:「完璧です。 教授、 貴方は神です」
教授:「ふふ、 早速ごく微量の魔力を通してみたまえ。 安物の靴下片方分程度の出力でいい。 ……そうだ、 実験の触媒にはこれを使いなさい」
差し出されたのは、 あまりにも見覚えのある古い防寒具だった。
ルイズ:「これって……。 私が以前、 教授の誕生日に予算を削って編み上げた手袋じゃないですか!」
教授:「いいんだ……この世紀の歴史的実証実験を見届ける為ならば、 君からの温かい贈り物を失うことすら惜しむまい……!」
トト:「虫食いの穴……めっちゃ空いとるで、 この手袋……。 要するにただの生ゴミやな」
トトの冷酷なツッコミを無視し、 私は受け取った手袋に全神経の魔力を集中させた。
ルイズ:「次元の理よ」
パチン、 と指を鳴らす。
――ポンッ。
かつて心を込めて編んだ手袋が、
 無慈悲な破裂音と共に、 因果の歪みへと巻き込まれて次元の藻屑と消えた。
等価交換とはかくも冷酷で、 哀愁に満ちたシステムなのだ。
その刹那、 私の視界から、 身体を優しく包んでいたはずの純白の布地が完全に消失した。
――だが、 私の柔肌には、 確かに先ほどまでの滑らかな絹の感触がある。 地下の冷気も一切感じない。
己の腕に視線を落とす。 そこにはただ、 剥き出しの白磁の肌があるだけに見える。
 しかし、 恐る恐る指先を這わせてみれば、 確かに滑らかなシルクの織り目が、 肌と指先の間を厳然と隔てていた。
ルイズ:(……なるほど、 そういう構造ですか)
私は瞬時に脳細胞をフル回転させ、 極めて冷徹に、 自身の身に起きた不条理な現象を科学的に分析した。
教授の組み込んだ演算プログラムは、 次元魔法の干渉から布地の『物理的質量』を保護することには見事に成功している。 しかし、 その強大すぎる魔力エネルギーを相殺するための等価交換のコストとして、 衣服に反射する『可視光線の屈折率』と『色素』のみを、 次元の彼方へ追放してしまったのだ。
つまりこれは、 物理的防御力を完全に残したまま、 女性としての視覚的尊厳のみをピンポイントで抉り取る、 悪魔の数式――!
ルイズ:「布地の屈折率をマイナスに反転させて透明化させるなんて……教授、
 貴方の脳内数式は完全に狂っています!」
羞恥で顔を林檎のように真っ赤にして叫ぶ私の横で、 トトが短い前肢をペチペチと鳴らして無慈悲な拍手を送った。
トト:「お、 理論上は生地が地肌にしがみついとるな。 全裸に見えて全裸じゃない。 大成功やんけ」
ルイズ:「どこが成功ですか! 視覚的には一糸纏わぬ完全な丸見えです!」
トト:「しかも自分、 靴下だけは普通に透過せんと残っとるで。 めちゃくちゃマニアックな趣味やな」
言われて自身の足元を見つめる。 魔力伝導率の高度な計算から見捨てられた純綿素材の靴下だけが、 透過することなくしっかりと足首を覆っていた。
教授:「おおーっ! 素晴らしい、 靴下の干渉波プログラムは無傷だ! 部分的なパラメーターとしては大成功だぞルイズくん!」
教授がマッドサイエンティスト特有の血走った瞳を輝かせ、 黒板に向かって狂ったように次なる数式を書き殴り始める。
ルイズ:「……客観的に見て人類史に残る大失敗です! これではただの、 『靴下だけを履いて街を徘徊する重度の不審者』ではありませんか!」
私の魂をすり潰すような悲鳴に、 トトは暢気に鼻をほじりながら深く同意した。
トト:「せやな。 でもエロティシズムの芸術点はカンストしとるで。 ギルドの筋肉野郎どもが見たら、 ありがたがって五体投地で拝むレベルや」
魔物との戦闘時でもない平穏な日常であるにも関わらず、 私のささやかな尊厳は、 いとも容易く完全崩壊を果たしたのだった。
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私の魂をすり潰すような悲鳴を完全に他所に、 教授とトトは「純綿素材とシルクにおける魔力伝導率の誤差」について、 手振りを交えて熱い学術的議論を交わしていた。
――その刹那。
バンッ!と背後の重厚な木扉が、 前触れもなく勢いよく開け放たれた。
ポエム記者:「ルイズ氏! 先ほどの薔薇の茂みでのインタビューの熱がどうしても冷めやらず、 我が魂のインスピレーションが、 これ以上は紙面に収まりきらな――ッ!?」
不法侵入同然に飛び込んできたのは、 学内報のあの熱血ポエム記者だった。
彼は私の姿――正確には、 空間にぽつんと不自然に浮かぶ綿素材の靴下と、 その上の、 何もない(ように見える)完全なる虚空――を見つめ、 ガタガタと手帳を握る手を震わせた。

ポエム記者:「えっ……見え……ない……? いや、 しかし、 私の洗練された記者としての嗅覚は、 そこに確かな『至高のシルクの衣』が実在する気配をビンビンと感じ取っている……!」
ルイズ:「エリオットさん、 明らかな不法侵入です! あと早くその重い扉を閉めてください! 見えないだけで私の物質的衣服(ドレス)が風圧でめくれて、 絶対防衛ラインが突破され――」
ポエム記者:「素晴らしい! これぞ『見えざる衣(究極の清貧)』の奇跡だ! 俗世の光すら透過させるそのあまりに清らかなお姿、 もはや神話の領域……!」
記者はカシャカシャカシャ!と狂ったような速度で魔導カメラのシャッターを連写し始めた。 レンズの向こうで、 彼の瞳がスクープの熱で爛々と輝いている。
ルイズ:「撮るなと言っています! ほら、 服は確かにあるんです! 触れば物理的な質量が分かるでしょう!?」
私は怒りに任せ、 透明なドレスの袖(※見えないけれどそこに実在する厚手のシルク生地)を記者の顔面に力いっぱい叩きつけた。
――バチィィン!
何もない空間から突如として発生した、 謎の物理的衝撃波が記者の無精髭の頬を捉える。

ポエム記者:「ぶふぉっ!? ……お、 おおお! 何もない虚空から、 確かに衣服の質量による『神聖なる平手打ち』が放たれた……! なんという高度な不可視の魔導障壁! これぞ世界を憂う聖女の、 真の戦闘形態(バトルモード)!」
記者は派手に鼻血を流しながら、 恍惚とした表情でメモ帳に文字を猛烈な勢いで書き殴るのだった。
ポエム記者:『――纏うは虚無。 しかしその神聖なる歩みは山をも動かす。 彼女が慈悲深く袖を振るえば、 不可視の因果が不届き者の顔面を破砕するのだ……!』
ポエム記者:「これ、 明日の学内報の、 いえ、 世界の魔導史を変える歴史的特報記事になります! 至高のインスピレーションをありがとうございましたァァ!」
記者は自分の血文字(※ただの鼻血)で赤黒く染まった手帳を愛おしげに抱きしめ、 またしても嵐のように廊下の彼方へと消え去っていった。
静寂を取り戻した地下研究室で、 私は何もない虚空(※自分の透明なドレスの胸元)を見つめたまま、 魂の抜けた声で呟く。
ルイズ:「……もう嫌だ。 大学なんて辞めて、 早く実家に帰りたいです」
トト:「諦めや。 あいつの脳内歪曲フィルター、 もう王国の国家防衛結界より分厚くて強固やわ」
トトがスルメの硬いイカの足を容赦なく噛みちぎりながら、 心底からの哀れみの目を向けてくる。
教授:「それよりもルイズくん! 純綿素材の靴下だけは因果の透過現象から完全に置いてけぼりにされているという事実が、 魔導幾何学的に実に興味深い! ……おや、 ところで君はなぜそんなに涙を流しているんだね?」
――そして、 翌朝。
女子学生寮の私の自室に、 無慈悲に投げ込まれた新聞の一面トップ。
そこには、
新聞:『聖女、 ついに物質的衣服という前時代的な概念すら超越した「見えざる衣(透明)」を纏う。 ――ただし靴下は履く』

という、 私の洗練された社会的尊厳を原子レベルで粉砕し、 虚無へと追放する狂気の見出しが、 踊るように残酷に刻まれていたのだった。
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【ルイズの研究ノート;第2片】
・対次元魔導ドレス(プロトタイプ)
考察;
魔力干渉による布地の『物理的質量』の保護には完全に成功した。 しかし、 魔導波形の干渉を相殺する代償として、 衣服の『色素』と『可視光線の屈折率』のみが次元の彼方へと等価交換されるという、 極めて破廉恥な致命的バグが発生。
結果として、 衣服の持つ物理的防壁(防御力)を残したまま、 女性としての視覚的尊厳のみをピンポイントで刈り取る悪魔の呪物と化した。
疑問点として、 なぜ魔力伝導率の著しく低い純綿素材の靴下だけが、 因果の透過現象から取り残されたのか。 事象の境界線に関する熱力学第二法則(エントロピー)の歪みによるものか、 あるいはこの世界という不確定なシステムが、 私に『マニアックな羞恥心』を強要しているのか。 検証(及びプログラム修正)の緊急性は極めて高い。
……どちらにせよ、 私はもう、 普通にお嫁には行けない。
―――(第2章・完)―――
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あらすじ 教授の研究室を訪れた私は、第一層の観測データを提出しつつ、実験で衣装をすべて失い男物の超大きめTシャツ一枚という危うい姿で立ち尽くし、教授は胃薬を噛み砕きながら頭を抱えた。 教授は入学後の一ヶ月で三度も窓ガラスが吹き飛び、夏のボーナスが弁償費用で蒸発したことを嘆き、今回は国家レベルの災害だと報告書を突きつけた。 その報告は、迷宮下層から逃亡していた古代種の魔力反応が第一層の岩壁ごと消滅したという騎士団の緊急通達で、教授は私の放った魔法の余波だと疑った。 しかし私は、最高級シルク下着の魔力伝導率を100%凝縮するため空間曲率と魔導波形を脳内再計算し、余剰次元の座標を古代種へ押し付けて排除しただけだと説明した。 教授はそれを神の領域の数式を粗大ゴミのように扱う暴挙と断じ、一本の論文で魔導史を覆す発見だと興奮しつつも、胃の痛みを増幅させた。 私が空腹と実証用下着代の経費計上を求めると、教授とトトは即座に却下し、まず金銭感覚を直せと呆れた。 こうして、圧倒的な魔導の真理と矮小な生活費問題の落差の中、私は彼氏シャツ一枚の羞恥を抱えたままギルド手続きへ向かうことになった。 大学の中庭を白磁の生足で歩く私に学生たちは目を背け、教授は白衣を貸そうとするが、私は他人の魔力が染みた布は出力係数が乱れると固辞した。 トトはこれ以上脱ぐ気かと皮肉り、教授は乙女の風紀を案じて半泣きになり、私はTシャツ程度ではいざという時の火力が出ないと本気で心配した。 そこへ学内報「真実の探求者」の熱血ポエム記者が飛び出し、取材費を問う私にボランティアだと胸を張り、禁忌の黒箱について直撃した。 私の脳裏には、最下層の未知繊維で作られた兄特注の「国家レジェンド級パンツ」の黒箱が蘇り、着用した瞬間に尊厳が死ぬ悪夢の記憶が疼いた。 教授は今はギルドが先だと制止し、トトは私が再び金に釣られているとため息をつき、記者は肯定と決めつけて羽根ペンを構えた。 私は衣服を触媒にする等価交換の厳しさを自覚しつつも、手元の古い手袋を差し出されれば、温かな贈り物を失ってでも防具を得るべく決意した。 トトが虫食いだと一蹴したその手袋に私は魔力を集中し、指を鳴らして次元の理を作動させ、乾いたポンッで素材を因果の歪みに溶かした。 直後、身体を包んでいた純白の布は視界から完全消失したのに、肌には絹の感触が確かに残り、冷気も遮断されているという異常が起きた。 私は即座に分析し、教授の演算は布の物理的質量の保護に成功したが、エネルギー相殺の代償として色素と可視光の屈折率だけが等価交換で追放されたと結論した。 つまり、防御力は残るのに見た目だけ完全に透明化する悪魔の数式で、女性の視覚的尊厳をピンポイントで刈り取る最悪の仕様だった。 私は布地屈折率のマイナス反転を狂った発想と非難し、トトは全裸に見えて全裸じゃない成功だと手を叩き、私は靴下だけが見えている倒錯に絶叫した。 魔力伝導率の低い純綿の靴下だけが透過から外れて残存し、教授は部分成功だと目を輝かせ、私は「靴下だけ履く不審者」化に頭を抱えた。 トトはギルドの猛者が五体投地で拝むレベルの芸術点だとふざけ、私は平穏な日常で尊厳が崩壊した現実に打ちひしがれた。 それでも教授とトトは綿とシルクの伝導率誤差で盛り上がり、私は置き去りにされたまま、研究と羞恥の非対称性に胃が軋むのを感じた。 そこへ先のポエム記者が扉を乱暴に開けて乱入し、空間に浮かぶ靴下と透明領域を見て震えつつ、不可視のシルクの気配を嗅ぎ取ったと陶酔した。 私が扉を閉めろと怒鳴り、見えないが物質はあると訴えると、彼は「見えざる衣(究極の清貧)」と讃えてシャッターを狂撮しはじめた。 私は逆上して透明な袖で彼の頬を打ち、虚空からの重い衝撃音が鳴り、記者は聖なる平手打ちと称してさらに恍惚を深めた。 彼は「彼女が袖を振れば因果が顔面を破砕する」と血文字めいた鼻血でメモを汚し、世界を変える特報にすると宣言して去っていった。 静寂の後、私は大学を辞めて実家へ帰りたいと呟き、トトは記者の脳内歪曲フィルターが国家防衛結界より強いと嘆き、教授は靴下の孤立現象に夢中だった。 翌朝、女子寮に投げ込まれた学内報の一面は「聖女、見えざる衣を纏う。 ただし靴下は履く」と踊り、私の社会的尊厳を原子レベルで粉砕した。 私は研究ノートに、布の物理質量保護は成功も色素と屈折率が等価交換で消えた致命的バグだと明記し、視覚的尊厳が刈り取られた事実を冷徹に記録した。 さらに、純綿靴下だけが透過から外れた理由として、事象境界におけるエントロピー歪みか、世界のシステムが私にマニアックな羞恥を強要している可能性を列挙した。 私は検証とプログラム修正の緊急性を高と判断しつつ、もはや普通にお嫁に行けないと結語して、第二章の幕を閉じた。 補って言えば、教授の数式は次元干渉の保護と相殺の両立に挑む先端であり、今回の失敗は理論を飛躍させる貴重なバグレポートでもあった。 また、古代種の消滅は偶発的副産物ではなく設計的排除の結果で、私の再計算能力と素材の魔力伝導率が臨界点で結びついた事例として重要だ。 そして、黒箱=兄の特注防具という爆弾情報は、学内の誤解を招く火種であり、経費問題と風紀問題と国家級成果が三つ巴で私を追い詰めている。 結局、見えない衣と見える靴下という逆説は、私の研究が抱える等価交換の倫理と社会的視線の残酷さを象徴し、次の改良と名誉回復が急務となった。
解説+感想感想:めっちゃ笑ったし、クオリティ高いわ
第2章、最高にルイズらしい「尊厳の完全崩壊回」になってて最高だった。
良かった点
1. 羞恥のエスカレーションが美しい 最初は「ただの oversized Tシャツ一枚」→「透明ドレス+靴下」という段階的な破滅が絶妙。 特に透明ドレスのオチは天才的。物理的には守られてるのに視覚的に全裸、という「理論上は成功、実際は地獄」という教授の研究結果が、ルイズのキャラに完璧に刺さってる。
2. 各キャラの掛け合いが生きてる 教授の胃痛進行具合がリアルで可哀想(笑)。 トトの関西弁ツッコミが容赦なくて好き。あの「せやな」の破壊力。 ポエム記者の脳内補完能力が凶悪。ルイズの苦痛を全部「神話」に変換する狂気が最高の味。 筋肉騎士リーダーも相変わらずの聖女脳で安定の狂信。
3. ルイズのキャラが濃すぎる 金銭感覚の破綻具合と、魔導の天才っぷりのギャップが本当に面白い。 「歴史より明日のパンです」のセリフとか、本気で言ってる感が最高にルイズ。 最後の研究ノートで「普通にお嫁には行けない……」って締める自己分析も可愛い。
特に刺さったシーン 記者に「見えない衣服」を平手打ちするところ ギルドで二つ名《聖裸の魔女》が正式登録される絶望 透明ドレス完成直後の「靴下だけ残ってる」事実発覚 新聞の見出し『ただし靴下は履く』
この「ただし靴下は履く」が本当に腹抱えて笑った。マニアックな羞恥の極みやんけ。
総評 第1章からさらにパワーアップしてて、コメディとしての密度が非常に高い。エロティックな描写と学術ネタ、経済ネタのバランスが絶妙で、読んでて全くダレない。ルイズの「理論では正しいけど結果が常に最悪」という特性が、ここまで徹底的に弄ばれてるともう愛おしいレベル。
正直、このシリーズは「尊厳を削るほど強くなる魔女」というコンセプトがガチで確立されてきてると思う。
次章ではどんな「経費」と「衣服」を失うのか、すでに楽しみで仕方ないわ。 ルイズ、ほんまお前は……(哀れみと愛情を込めて)
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